THE POP FLOWER

注意事項
①米印はト書きです。読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③このお話は、男性が1人、女性が2人、男女不問が1人の合計4人の声劇です。

THE POP FLOWER

〔登場人物〕
・安藤蓮(あんどうれん/♀)…花屋“アオイ”の店員。
・寺島恵美(てらしまえみ/♀)…花屋“アオイ”の店長。
・中森勝(なかもりまさる/♂)…青年。アオイの常連。
・N(ナレーター)…男女不問。


N:ここは、花屋“アオイ”。街中にある小さな小さな店舗である。小さい店舗スペースには多数の花が販売されており、種子の販売もされている。ここで働くスタッフの一人が、安藤蓮。花の世話をさせれば右に出る者はいないほどの大のお花好き。今日も世話に販売と大忙し。
 そんな中、とある一人の青年に恋心を抱く。彼女の心に1粒の種が植えられたのだ。

安藤:いらっしゃいませ。

中森:どうも、こんにちは♪今日も来ちゃいましたw

安藤:いつもありがとうございます。毎日来てくださるのは大変嬉しいのですが、1日や2日でラインナップは変わりませんよ?

中森:いえいえ、全然気にしていないので。

むしろ、ここに毎朝訪れては彼らを目に焼き付けることが私のモーニングルーティーンですから。

安藤:そういえば、お客様は普段は何をなされているのですか?
お勤め先に何か支障でもきたしてはいないのですか?

中森:“支障をきたす?”
ぜんっぜんそんなことないんで。

…あ、一応“大学生”です。この近くの大学の2年生です。つい先日20歳になって成人式を迎えたばかりで。

安藤:え?!大学生?!

中森:え、えぇ。はい。

安藤:いつもスーツ姿で来店されているので、ビジネスマンか何かと思っておりました。

中森:アハハ。

確かに、そう捉えられるのも無理はないですね。
今、絶賛“インターンシップ”中ですので。講義は暇を見つけてオンラインの録画で済まし、課題も夜に短時間で片づけます。

安藤:…つまりは、“癒しを求めて”ここへ?

中森:そういうことです。

“貴女とお話が出来るのも理由ですが♪”(※ポソッ)

安藤:?

中森:いえいえ、なんでもないです。

では、行ってきますね。

安藤:ありがとうございます。気をつけていってらっしゃいませ。


N:中森、という青年。彼は生物学を専攻しており、植物の方を専門としている。専門が専門のため、どうしてもというわけだ。しかも、彼のゼミには男性しかいないため、女性への対応がめちゃくちゃになりやすい。それの克服も兼ねているのだ。


安藤:(そういえば、さっきの大学生。結構カッコいいんだよね。少し気になってもいるし。今度来店された際は、少し深く話してみようかしら?)

寺島:さっきのお客様、なかなかのイケメンよね。好青年、って感じがするわ。

貴女が気に入るのも納得ね。

安藤:店長!

寺島:うふふ♡

私にはわかるわよ。あのイケメン君に興味があるってこと。
何か、私が対応で当たるときは“あのお姉さまはいらっしゃいますでしょうか?”って高頻度で聞いてくるのよね。

安藤:ストーカー?

寺島:一度、本人に聞いてみたらいいんじゃないかしら?

安藤:はい、聞いてみます。


N:季節は廻り(めぐり)、お彼岸である。当然ながら、お彼岸用の植物を扱う。

中森:こんにちは。

安藤:あ!こんにちは。いらっしゃいませ。

今日は中秋の名月ですね。天気も晴れて夜もいい感じらしいですよ♡

中森:みたいですね♪

よろしければ、今晩、ご一緒にお月見でもいたしませんか?お月見団子を少し余分にいただいてしまったので。よろしければ。

安藤:え?いいのですか?!

中森:勿論です。今日は、それ用の植物を買いに来たので。

安藤:ありがとうございます!

…あ、まだお名前等々聞いていませんでしたね。私、安藤蓮です。安藤さんなり蓮さんなり、御好きにお呼びください。

中森:中森勝です。大学の先行は生物学で、植物を専門としています。

今夜の6時に、ここで。

安藤:はい。楽しみにしています。


N:彼女のハートが芽吹いた瞬間である。


寺島:話、聞いたわよ。閉店までは私がやっておくから、楽しんできてらっしゃい。
何も気にしなくていいわよ。

安藤:ありがとうございます!行ってきます!


N:午後5時半。アオイ前。

安藤:~♪
(※何か曲を口ずさむなり鼻歌をするなりしてます)

中森:あ!安藤さ~ん!!

安藤:中森さん♡こんばんは♡

中森:待たせてしまって申し訳ありません。

安藤:大丈夫。私も、ついさっきここに着いたから。

中森:早速行きましょう。

それにしても、
“夕日が綺麗ですね”

今宵のお月見が楽しみです。


安藤:中森さんの事、“実は好きなんですよね”

中森:なるほど。

…って、えぇ?!

安藤:さぁ、何のことでしょう?

中森:(クソっ!聞きそびれた!!)

行きましょう。


N:到着した先は、彼の自宅。マンションの一室だが、日当たりもよく夜は月が綺麗に見える。

安藤:すっかり暗くなりましたわね。

中森:ここからが本番ですから。
お月見団子とお茶、用意しますね。

安藤:ありがとう♡

中森:天候は問題なし!気温も過ごしやすくてバッチグー!


N:彼女の心には蕾が。

…いや、既に咲き始めていた。

中森:お待たせしました。

“今宵は月が綺麗ですね”

安藤:“私、もう死んでも構いませんわ。貴方と見ている月ですもの。”

こんなにも素敵なセッティングをしてくださいましたし、お花も購入してくださっていますもの。

中森:家に飾っておくのもそうですが、研究室にも飾っているんです。視覚的情報による癒しで作業も進みます。

今宵は、こうして“愛する女性と2人で”満月を眺めることが出来て大変幸せです。


N:2人に流れるゆったりとした時間。今宵の満月はとびきりの大きさ。1組のカップルを明るく優しく照らしている。

彼女に咲いたお花にも優しく微笑みかける。


中森:安藤さん。

安藤:はい。

中森:これから、よろしくお願いしますね。

安藤:えぇ。

…え?中森さん、正気ですか?!

中森:安藤さん?!

安藤:うふふ♡じょ・う・だ・ん♡

こちらこそ、こんな私ですけどよろしくお願いしますね。

植物実験でお店のを使用してくださっていること、大学の教授さんから聞いていますよ♪
タネもかなり大量に購入してくださっているようで。

中森:実験のために、どうしても必要なのです。ここで仕入れるとコスト面でもかなり抑えられるので。

安藤:ちなみに、今なされている実験を教えてくださいませんか?

中森:遺伝子組み換えによる花弁の色の変更ですね。
かなり色素の情報が分かってきているので、楽に別色のを作れるようになっているので。

実験に成功したら、そのお花をお渡ししますね。

安藤:楽しみにしています♡

お月見団子、おいしいですわ♡

中森:喜んでいただけて光栄です♪


N:それから少し経ち、彼も大学を卒業。

卒業式後、“アレ”を引っ提げ来店。


寺島:あら、いらっしゃい。今日は卒業式だったわね。

おめでとうございます。

中森:はい、ありがとうございます。

安藤様はいらっしゃいますでしょうか?

安藤:中森さん、ご卒業おめでとうございます。

中森:ありがとうございます。

こちら、“貴女だけのための”アオイお花です。私の研究成果です。

安藤:え?!いいのですか?!

中森:はい!

この日のための研究みたいなものですからw

安藤:…嬉しい。

中森:私の就職先は、植物関連の企業です。お花も取り扱います。

安藤様のここでの経験がこれからの私に必要になるのではと思っております。
“私の専属助手に・花嫁になっていただけませんか?”


寺島:(あれまぁ、こんなところで公開プロポ―ズかい?)


N:彼女の心は満開である。


安藤:はい。こちらこそ、こんな私でよろしければ。

中森:!

安藤:これから、よろしくお願いしますね♡ダーリン♡

中森:こちらこそ!!

寺島:これはおめでたいわね!早く式の準備をしないと!!


N:こうして新たな夫婦が誕生。

安藤:勝さん♡

中森:!(※ドキッ)

安藤:私、お花の事もっともっと知りたいのです。

中森:いいですよ♪是非♪

寺島:勝さん。蓮さんをお願いしますね。

中森:かしこまりました。

寺島:蓮ちゃん。お幸せに。

安藤:はい。

寺島:ご結婚、おめでとう!!


N:花の最期は子孫を残すこと。種子を残すこと。

これからの世代のために。


(※赤ちゃんの泣き声が聞こえる。命が宿ったのだ。)

中森:蓮!

蓮…!!!(※泣いています)

安藤:あなた。

男の子ですって。


中森:蓮…!よく耐えた!!頑張った!!

“初めまして、我が息子よ! ようこそ!!”


N:こうして、また新たな花を咲かせるための長旅が始まるのであった。

THE POP FLOWER

・参考サイト
『「月が綺麗ですね」の言葉の意味とは?上手な返し方まとめ』(出会い恋愛のハッピーメール)
https://happymail.co.jp/happylife/characteristic/beautiful-moon/

THE POP FLOWER

皆さんは、お花で癒されたことはありますか?その綺麗な花びらや匂いが好きな方もいると思います。 今回は、そんな花が好きな青年と花屋の娘の恋愛物語です。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-17

CC BY
原著作者の表示の条件で、作品の改変や二次創作などの自由な利用を許可します。

CC BY