星めぐりのコンダクター
星めぐりのコンダクター
星を回す指揮棒。
僕がそれを拾ったのは、月の満ち欠けが四度巡った十月の終わり。
街では、おばけや魔女や、漫画のキャラクターの仮装をした人々で賑わっていた。
僕はその指揮棒で人々の心に少しだけ彩りを加える。
それが僕の仕事。
この指揮棒を拾った時から僕が僕自身に定めた仕事。
空へ向けて二度、三度、横に斜めに、ふらふらと空を切った。
すると星は流れたり、大きく光ったりしてそれに気づいた人たちは、わっと声をあげる。
たまらなく気持ちがいい。
人々の歓声が、驚いた表情が、僕の心を満たした。
そうこうしていると星たちが瞬いて、どこからかトランペットの星空を讃えるような音が高く響き渡った。
いや、トランペットだけじゃない、いろんな金管楽器の音が聞こえて、星条旗よ永遠なれが街中に響き渡っていた。
「オーケストラのやつも指揮棒をふるってやがるな」
僕も負けじと星を膨らませたり、流したり、夜空はまるでコンサートホールだ。
その日、街は笑顔であふれていた。
星めぐりのコンダクター