無題

『無題』


暗い部屋にひとり、広い世界にたくさん。
深い海の孤独。
「あぁ、貴方の名前はこれにしよう。」
空気は酷く脆く、深海は重かった。
手を伸ばして届いた。
隙間から雪が零れて、貴方はわたしの前に立った。
煌々と輝く光の玉。
貴方の名前だという。
「わたしのあげた名前は?」
捨てたのだと。
灰が降ってきた。その時、わたしの目に入った。
扉が一枚そこにあるだけ。
〈ようこそ、燃えかすの人〉
ドアノブは木炭、ベルには頭蓋、玄関マットは過去が敷いてある。
雪は、止まないまま。

無題

無題

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-17

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