ルル、アイスはバニラ派

あおい はる

 ルル、眠りから覚める頃には、美術品となって。
 あしたデートしようと、メールがきたのは、その、あしたのことで、ほんとうならば、きのう、こなければならなかったメールが、きょう届いたことを、わたしは、でも、そういうものかと思って、削除した。メールをくれたひとは、七日前に、えらばれたものとして、地下街に行ってしまって、えらばれたものたちは、通信機器の所持をみとめられていないから、あのひとがつかっていた携帯電話は、解約されて、あのひとのメールアドレスは、もう、存在しないはずなのだけれど。ほかのひとがつかわなくなったメールアドレスというのは、リセットされ、ちがうひとがつかうことなど、可能なのだろうか、だとすれば、まだ、あのひとのアドレスを消していなかった、わたしの携帯電話に、あのひとのなまえでメールが届くことも、納得できた。まぁ、じっさいには、べつに、どちらでもよくって、あのひとのつかっていたアドレスを、しらないだれがつかおうが、そのメールが、遅れて受信されようが、わりと、いまは、どうでもいい事項だったのだ。おとうさんが、テレビで観たからと、コンビニを渡り歩いて買ってきた、コンビニ各社の冬のおすすめアイスの、いちばんチョコレートっぽいやつを、ぱくぱくと食べた。ルルはいま、わたしのなかにいる。しばらく、ずっと、ちがう国にいたそうなのだが、つい二日前に、ルルはかえってきた。
「やっぱり、あなたのところがいちばんね」
と言って、ルルは、わたしがなにも答える隙もなく、するんと、わたしのなかにはいってきた。からだのなかに、質量のあるものがはいってくる感じは、すこしだけ、セックスのときの挿入感に似ているのかな、と想った。ふしぎと、すぐに馴染んだのは、きっと、生まれたときから長いあいだ、わたしとルルがひとつのものだったからなのだろう、とも思った。離れていたときの喪失感は、たいせつなひとを失ったときのそれに近く、けれど、同時に、妙な清々しさもあった。きょうだい、というより、ふたご、って感じ。
 ルルがささやく。
「わたし、アイスは、バニラのほうが好き」
 うるさいよ、と、わたしは呟きながら、あしたはバニラのアイスを食べようと決める。かれこれ三年つかっている携帯電話を放って、わたしはアイスを食べ続ける。

ルル、アイスはバニラ派

ルル、アイスはバニラ派

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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