粗鬆

渡逢 遥

蝕まれていくのが 途中から心地よくなったんだ
嘘一色になったきみの頭に もう矯正の余地はない
更正の余地もない
断罪に対する恐怖はとうに失くなり
疑念が齎す躊躇いも根絶やしにされた
ようやく判ったろう、自分を妨げていたものは
自分以外のだれでもなかったということが。
きみはその世界で幸福そうだ
最初から一人でいられたなら
秩序や調和を乱してしまうことも
疎外され 弾圧され 断罪されることもなかったろうに
時の悪戯というやつは 残酷なものだね
ほら、見てごらんよ。対岸の人たちを。
みんな自分自身をふくめて
だれかや何かを傷つけないではいられないんだ
これからは脅かされることも傷つくこともなく
共倒れの一途を辿っていくその様を
何の罪の意識もなく この汀から眺めていようね

粗鬆

粗鬆

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-01-13

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