時速1700キロについて

時速1700キロについて

わかっている。あれはきっと空なんかじゃない。共鳴にうなされる夜、うなる夜、地球の自転とともに、時速1700キロで回転する。朝昼夜なんてものは常に空とともにあって、かなしいようなくるしみのようなうらめしいような、笛になってしまった。どうしようもない見立て殺人。生命のスープをすすって、使徒かアダムかなにかにあこがれてたんだろ、どうせ。
解放を募集中。
天才が枯死していくからのこされたのは実質ぼくだけで、若さという、水分含有量に人間的な要素のすべてが左右されている。月の引力に吸い込まれていく意識をなんとかつなぎとめるために張り巡らされた神経細胞。人道的なんだよあきらめなよと言いながら月光に満たされて、赤い心臓を共鳴で破裂させて、一ばん無惨な虐殺の方法を実践している。ぼくの存在そのものが、時速1700キロの檻なのだ、と。白い指で、神経細胞をほどく。脳みそもほどければ、水、に還元されて月へとかえる。ぼやっと薄目。教祖? リアルぼくは、どこ。教祖? ねえ、教祖? 教唆先導? 寝ても起きても生き違えても時速1700キロの檻。冬だから氷点下だからしずかに水は凍る。凍ったらガラス、そうじゃなければ水晶みたいにきれいだ。それなら絶対きれいな檻はきれいなままで、いますぐ殺して。

時速1700キロについて

時速1700キロについて

あれはきっと空なんかじゃない。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-09

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