二十四時の境界

 無意識のうちに、やさしいだれかのこと、愛せたらいいのに、嫌悪、ではなく。こころが、砕ける瞬間を、わたしはみたことがある。あの、二十四時の、街の住人は、いつも、残酷な物語を紡いでいて、きっと、太陽のしたで生活するわたしたちのことを、うらんでいる。そう、おなじ星に住んでいても、妬み、嫉みは生まれ、僻み、蔑み、貶めるような、負の感情は、度を過ぎれば、世界平和なんて、軽く蹴散らしてしまう。の。かなしいから、そういうときは、みんな、黄色のカステラを、食べればいいのに。ふかふかで、おいしいよ。わたしは、きみの、砕けてしまった、こころの断片をひろい、たいせつに保管しているから、きみは早く、目をさましてほしい。ただ白いだけの部屋は、たいくつだ。
 いつかのクリスマスのあと、みあげた空の星座と、二十三時の、世界が切りかわる寸前の、ふしぎな空気を、わたしはたまに、思い出すよ。二十四時の、街の住人は、みんなすこしだけ、わたしたちとはとちがうにおいがする。それは、春の夜のあれのような、夏の海のそれのような。そういえば、きみは、ちょっとだけ火葬場のにおいに似ている、とかいっていたけれど、でも、まだ、わたしは、そのにおいを知らない。

二十四時の境界

二十四時の境界

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-09

CC BY-NC-ND
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