【超短編小説】ぼひょーおじさん

六井 象

 昔、近所の林の中に、みんなから「ぼひょーおじさん」と呼ばれているおじさんがおり、いつも木と木の間に突っ立って、涙で潤んだ目でじーっと遠くを眺めていた。子どもの頃は「ぼひょー」という間抜けな響きと、昼も夜もそこに突っ立って、何をしても動かないおじさんが面白くて、よく石を投げたり棒でつついたりしていたのだが、今大人になってから考えると、あの人は「墓標おじさん」だったんだなあ。誰の墓標だったのか、なぜあのおじさんが墓標のかわりをやっていたのかはわからないが、ぼくが中学生になったくらいの時、いつの間にか「ぼひょーおじさん」は姿を消していた。今、おじさんが立っていた場所にはアイスの棒が一本立てられている。たぶん「ぼひょーおじさん」の墓標なのだと何となく思う。

【超短編小説】ぼひょーおじさん

【超短編小説】ぼひょーおじさん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-01-09

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