___この町で
古本屋って素敵ですよね
1
「いらっしゃーい」
ここは、すれ違う人の顔が覚えられるくらい小さな町。
僕の名前は、逢坂 恋(おうさか れん)。
古本屋で働いている、家出少年だ。
高校2年に上がってすぐ、昔から短気だった双子の兄が僕に手を挙げたのを理由に、
昔から馴染みがあったこの古本屋に来た。
店長(?)は僕を嫌々ながらも引き取ってくれた。
必要なものだけここに持ってきて、僕はしばらくとどまることを決めた。
「居候なんだから働かねぇと追い出すからな」
と、店長に言われたからこうして働いている。
学校へ行き、帰ったら店番。結構大変だったが、最近ではちょっと慣れてきた。暇潰しにもなるし、何よりあの兄の顔を見なくて済む。それだけで幸せだ
。
「あら、今日は店長さんいないのね」
ぼーっとしていたら、客が来たようだった。
「店長なら奥に居ますけど、呼びましょうか」
「いいえ、結構よ。特に用はないから」
随分、おとなしい人だった。
見た目的には、僕と同じ年ぐらいなのに。
「あなた、私と同い年ね」
「え、」
断定してきた。え、なんで、僕なんか年齢特定できるものつけてたっけ。
「制服、私とおんなじ高校のね。名札の色も一緒。だけど、まだ同じクラスになった事はないわね。不思議、2クラスしかないのに」
そう言ってくすくす笑う彼女は確かに、僕と同じ高校の制服を着ていた。
そして、名札は緑。2年っていう印。
名前は、出雲 日和(いずも ひより)。
「じゃあ、また来ますね」
にっこりして彼女は帰って行った。
「てんちょぉーお、出雲さんっていう人が来たんだけど」
「あ、そう。呼んでくれればよかったのに。渡すものがあったから」
「そうだよね、何で呼ばなかったんだろう。店長に用がある感じだったのに、何で」
何で僕は、彼女ともっと話したいと思ったんだろう...
学校でまた、会えるかな
2
冬の匂いがした。
季節が過ぎるのはすごく早い。
特に秋なんて、つい最近の熱さが嘘のようだ。寒すぎ。
「ズビッ、さっびー。てんちょぉー、暖房とかないのー」
「お前をここに置くだけで大変なんだ。我慢しろ。できねぇなら出ていけばいいさ」
痛いところついてくるなぁー。
「へぇへぇ、おとなしく学校行きますよっと」
僕がそういうと、店長はすごくいやらしい目をしていた。
「なんだよ」
「いや、別に。日和に会えたらいいな」
「はぁ!?
…もう知らん、行ってきます!!!」
(バタバタバタ)
「転ぶなよー、いってら」
店長の声はもう、聞こえないくらい、それくらい僕は羞恥に満ちていた。
そりゃ、彼女の事は少し気になる、けど、別に、そんな、そこまでじゃない。はず。なのに
「寒い、のに、あっつい、なんで、なんで!?」
熱をごまかすため、走った。しばらくぶりに走った気がする。息がすぐに切れる。
でも、頭の中はあの人でいっぱいだった。
『出雲日和』
知り合い少ないけど、頑張って、誰かに聞こう。彼女のクラスとか。そして、頑張って仲良くなりたいな。昨日まで嫌いだった学校が、たった一度、女の子に会っただけでこんなに足が進むようになるなんて...
一目ぼれ…「とか、きっしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああ」
あああああああ、体中掻き毟りたい!!!もうやだ、乙女か!!!!!きっもおおおおおおおおおおお!!!!
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
僕は、近所のひとにじろじろ見られながら、奇声を発しながら、全力疾走で校門を目指した。
___この町で
よんでくれてありがとうございます
続きます