ヒマラヤについて

ヒマラヤについて

また世界にぼくを見出してほしいぼくがいる。なんかもう10000年は繰り返しているような、実際10000年生きたことなんてなかったような気もするけど、変化がない。質量保存の法則がすでに亡き今、きみたちはどう生きるか。鏡と鏡で合わせ鏡。押しつぶされてひしゃげてガラス体みたいにどろっと透明に。
怖い! ただただそれだけの感情をぱちっときれいに体験したい。こんな冬なら、何もかも切っ先がきれいで、ヒマラヤみたいに白いはずだ。一瞬の悠久がやがてぼくを襲い、全てにおいて矛盾していることを誇示してくるだろう。歴史に傍観されるだけでもう誰もぼくを聞かないしぼくを感じない。ぼくはきっとこの世にいない! でもそれは特別なんかじゃない! ルックスも頭脳も運動神経も何もかも秀でていないぼくのことだから! 彼も彼女もこの世にいない! 一瞬の悠久がぼくらをこんなことにしたんだ! らん、らん、らん。音がほしかった。賛美してほしかった。にせもののからだにとりつかなかった人生を返品してほしかったぁっ。寒いよ。寒いとからだが凍結でぱらぱらして、ダイヤモンドダストになるよ。青いだけの空に近いのはこれまた神様に近い証拠。鮮やかな空色で傍観してくれ。つまらなそうに、諦観してくれ。

ヒマラヤについて

ヒマラヤについて

にせもののからだにとりつかなかった人生を返品してほしかったぁっ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-08

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