うつくしいものの狂気

あおい はる

 葬る、月、は、きみの寝床。
 さみしいきもちだけ、しっている。あの、三角形の、むっつはいっているチーズが、ときどき、ものすごいごちそうに思えるときの、つまりは、幸福の振り幅が、やけにおおきい瞬間にみる、映画、流行りの、まったく興味はなかったのに、そういうときは、なぜだか、ゆるせてしまう。コイビト、というなまえの存在を、わたしは、いつかは得るのだろうと思っているし、一生、漫画や、小説や、ドラマなどの世界だけのものとして、わたしのかたわらには、よりそわない可能性もある、気がしている。だって、わたしは、わたしではないにんげんを、たいせつにできていない。
 風がつよい。透明な針に刺されているみたいに、痛い。まもられていない、むきだしの皮膚。
 雪は降っていないのに、こんなに寒くて、雪が降っているところは、一体、どれだけ寒いのだろうと想像して、でも、これくらいかもしれないという予想は、おおかた、はずれるものである。わたしは、雪をみたことがない。テレビのなかの、雪は、白銀のうつくしさと、にんげんを、かんたんにおしつぶしてしまうほどの、こわさをもちあわせて、まるで、ちょっと、小悪魔みたいな、ものじゃないか。きみは、そんなかわいいものじゃない、というけれど。すみれの花にあいされた、きみが、わたしを、ときどき、どうしようもない焦燥にかりたて、無邪気に、くびをしめてくるので、朝の、わずかな時間だけでも、きみのことをわすれていたい。ニュースも、エンタメも、ひじょうにむなくそわるくなるときは、たいてい、インターネットのなかでみんな、さわいでる。群れで狩りをする、どうぶつみたいだ、と思って、でも、にんげんは、どうぶつだった、と、なぜかしみじみする。トーストをこがした日。

うつくしいものの狂気

うつくしいものの狂気

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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