憧れていた人

路上ライブって羨ましいな
歌っている人はまた何かを羨ましがる
明け方まで歌ったら、私が買ってあげてもいいよ
三ヶ月後、彼は池袋東口から消えちゃった
ネットからも消えちゃった

細胞は入れ替わる
そういう歌を彼は歌っていた
だから自分を取り戻すとか聞くと笑っちゃうんだ

彼が作らないなら私が作ってやる
突き抜ける天の川みたいな声がもう聴けないのなら
そういう曲を描いてやる

でも文系の私に理系のあなたの詩は書けない
どうしてくれるんだよ

天の川がぐにゃぐにゃになっている
こんな汚い夜は望んでいなかった
池袋から天の川は見えないけれど

私はまた同じ改札を抜けた

憧れていた人

憧れていた人

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-05

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