憧れていた人
路上ライブって羨ましいな
歌っている人はまた何かを羨ましがる
明け方まで歌ったら、私が買ってあげてもいいよ
三ヶ月後、彼は池袋東口から消えちゃった
ネットからも消えちゃった
細胞は入れ替わる
そういう歌を彼は歌っていた
だから自分を取り戻すとか聞くと笑っちゃうんだ
彼が作らないなら私が作ってやる
突き抜ける天の川みたいな声がもう聴けないのなら
そういう曲を描いてやる
でも文系の私に理系のあなたの詩は書けない
どうしてくれるんだよ
天の川がぐにゃぐにゃになっている
こんな汚い夜は望んでいなかった
池袋から天の川は見えないけれど
私はまた同じ改札を抜けた
憧れていた人