こぼれだね
脱出計画をたててからのこと
一歩一歩はカウントダウンとなり
赤信号を待てば
水たまりが空を抱えていることや
色のない風が
ひかりを運んでいることや
そのほんとうのあたたかさを感じるのは
かじかんだ指先だけではないことを知りました
音には ひとつひとつ
それを奏でるなにかがあって
すれ違う人々は ひとりひとりの
いちばんきれいな思い出と
ほんとうのしあわせを持っているし
花が枯れてしまうことを
どうしてと問うこともなくなったし
急にいとおしくおもえたのです
すべてはこぼれだねでした
こぼれだね