危険なつばさ第6章

自然の脅威の中に、ただ、身を置く、強いものの、前に、力は無い、 
嵐の中で、僕を思いだした。君に、すべてを、たくす、以外に、、、命のすべてを、君にたくした。  
僕が知った、初めての、連帯感、

見渡す限り青い波、止まり木のない、海の上、疲れきって、僕は、帰ってきた。暗い寝床にもぐりこみ 悲しみと疲れが僕を、グッタリさせた。
日の光がさしている。ふたりの男がやってきた。二人共ションボリしている。甲板に座ってむっつりしている。長い時間が、流れていく。
 きのうは、僕が、間違えたのか。心が、揺れる。虫取り網では、無かったのか。
自分の、都合のいいように、心が変って行く。でも、外へは出なかった。
次の日も、男達はやって来た。空を見上げ、波を見た。
甲板に座った、二人の男の、力の無い姿が、僕に親しみを与えた。
僕は、 また、ボートの、下からでていた。
オ 、オと、声を出した。
二人共 顔を、突き出して僕を、ジロジロ見た。パラパラと甲板にパンをまいて、そううと帰っていた。そんな日が何日か、つづいた。
           四
,                            空に、灰色の雲が広がっていく。「雨がふるね。」
風が、吹き始めた。ホラ、雲が流されていくよ。太陽が雲に隠れてゆく。そして、灰色の雲は、ドンドン分厚くなってゆく。
 船員達が、何人もドアから走り出てくる。「嵐が来るぞ。」
「波にさらわれそうなものはないか。」しっかりと、固定しろ。
「甲板に、ロープをはれ。」太陽は、もう見えない。空は真っ黒になったよ。
波が、高くなっていく様子が、よくわかる。雨が降り始めた。
船は、波と風に、吹き飛ばされて、グオーン、グオーン、アー僕にはそうきこえる。僕は、もう、フラフラだ。僕は、うつぶせのボートの 中の、板を張った隅っこに両足をふんばて、ちぢこまっている。頭の上でド ド ド と雨が船底をたたく。足が滑る、イヤ からだが滑り落ちる。
もう、力がない。
「スパロウー スパロゥー」ジムニーの声がする。そう僕は、スパローと呼ばれている。ジムニーが、つけた名前だよ。
 船は、波に揺り上げられ、ズ ズ ンと崩れ落ちる。そのたびに、甲板に たまったみずが、僕のボートの、下から跳ね上がってくる。僕はずぶぬれだ。
僕は、波に揺られる小船のように、あちこち、からだをぶつけているようだ。
もうすぐ意識がなくなる。
ジムニーは、海の男だ。太ちょで、愉快なコツクさんだが、こんな海の上を、ノッシ、ノッシ、と歩いているのがわかる。ジムニーは少し腰を落とし、雨をよけながら、船に張られた、ロープを握り締めていた。
「おおースパロー。」船が、ゆれるたびに、たまった、あまみずが、下からとびあがってくる。
僕は、もう声も出ない。その、水溜りの中から、大きな手が救い上げた。
ジムニーは僕を、のぞきこんだ。僕は、パツチり目をあいた。尾羽根をピンと立てたつもりだった。 でも、そんな事はなんにもできていなかたんだ。
 ポツテりとした、分厚い手のひらは、ビツショリ、とぬれていた。
僕は、てのひらをみただけなんだ。
「ジムニー。」心臓がコト コト、鳴るくらいうれしかった。
ジムニーは、僕をズボンのポヶツトの中へ、入れてチヤックを閉めた。いつもここに、僕のパンが、はいっている。 あたたかかった。
僕は、その中でよこたわった。 ありがたかった。
 ゆれる。 ゆれる。 
ポヶツトの中で、おしあげられ、流れ落ちたジムニーもゆれているんだ。
「ジムニー大丈夫か。」僕は君が心配だ。
「スパロー スパロー」
ジムニーが、ポヶツトの上に手を置いて僕を呼んだ。 チユン、と泣いたつもりだった。 泣いたかどうかは、知らない。そして、眠った。

危険なつばさ第6章

危険なつばさ第6章

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-21

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