自選短歌 2020年12月
つまらない話ばかりですまないと盗聴している人にあやまる
処分とはときどき殺すことを言うときどき低い段差で転ぶ
あいつらは調子に乗って執拗に季節を殺す代理のくせに
磨かれたカガミハサミがしんと待つお客のいない床屋に入る
小麦粉がずっと小麦粉冬なのにやっぱり髪は短く切った
いちごあめもうすぐしゃぶり終わりそう日曜の夜綿雪が降る
水辺から離れて住んでキッチンに冷たい水と温かい水
あんまんが白あんだった驚きを人に言えないままで終わった
音楽に合わせて回る人形の笑顔の奥の歯車の熱
幾重にも僕らも歌も降りつもる宇宙に浮かぶ星のひとつに
数として数えられたらいずれゴミ天はどこまでだって天だよ
自選短歌 2020年12月