幸福の影
幸福に怯えているんだね
これ以上悪くならない場所にとどまりつづけることは
安定と安心をあたえてくれるだろう
不純な安心と、安定的な不安定を。
本人には決してそれが
不純であるとも
不安定であるとも見定めることができずに。
幸福を憎悪して
独善的な言動に走るきみは
誰に裁かれるべきでもないと僕は思う
きみはきみの真実を貫いているだけだから
誰に咎められるべきでもないと僕は思う
誰よりも幸福を憎悪しているのは
一度も幸福になったことのない人間ではなく
一度でも幸福の味を知ってしまった人間だ
事実としての幸福と
予兆としての幸福を持て余している人間だ
幸福なんて言葉に 不幸にも出会ってしまった人間だ。
幸福の影