マスターの近況報告 ~マスターの相談喫茶 外伝~
注意事項
①この話は4人で演じてください。男性3人と女性1人か、男性と女性2人ずつのどちらかでお願いします。
②米印はト書きです。読まないでください。
③カッコ内は読んでください。
マスターの近況報告 ~マスターの相談喫茶 外伝~
〔登場人物〕
・小野井 明正(おのい はるまさ/男)…“カフェ=リオール”の店主。53歳。
・野田 亜美(のだ あみ/女)…旧姓、長谷川。以前、このカフェに来店したことがある。。
・野田 晴也(のだ はるや/男)…亜美の旦那。過去作の、結婚相手の正体。
・N(ナレーション)…可能であれば男性で。女性でも可。
N:ここは、カフェ=リオール。マスターの小野井が淹(い)れるコーヒーと親身になって応えてくれる人生相談が人気のお店だ。
今回は、以前ここを訪れた“ビジネスウーマン”が再来店。渦中の旦那様もご一緒である。
小野井:本日は、以前予約をしてくださったお客様のご来店日ですね。2名様の予約ということで、どのようなお客様がご来店されるのでしょうか?楽しみです。
N:少ししてから、例のお客様方がご来店。見た限り、夫婦のようである。
それに、女性の方は小野井も見覚えがあった。彼女に関しては、言わずもがな。
小野井:いらしゃいませ。本日予約されていた”野田様”でよろしいでしょうか?
晴也:はい、間違いございません。
亜美:マスター、お久しぶりです。
小野井:亜美様、お久しぶりです。お待ちしておりました。
亜美:こちらこそ、なかなか時間を作ることが出来ず申し訳ございません。
やっとのことで調整ができました。
小野井:いえいえ、お気になさらず。
どうぞ、こちらへ。
亜美:ありがとうございます。
晴也:失礼します。
N:晴也は、亜美と小野井の関係を全く知る由(よし)もなかった。
何せ、”恋のキューピッド”が彼なのだから。
晴也:亜美。1つ聞いていいか?
亜美:えぇ。どうかしたの?
晴也:前さ、”マスター”って人物に手紙を送ってたでしょ?そのマスターって人物は、彼のことでいいの??
亜美:そうよ?彼のおかげなの。
命の恩人よ。
小野井:晴也様、でよろしいでしょうか?
ご紹介に預かったような気がしましたので、軽い自己紹介を。私が、そのマスターです。小野井でございます。ようこそ、”カフェ=リオール”へ。
晴也:こちらこそ、初めまして。晴也、と申します。うちの妻が大変お世話になりました。
小野井:いえいえ。とんでもございません。
晴也:妻がどうしてもこの店に行きたいとせがんでいましたので、何とか時間を確保してこちらに参りました。
亜美:マスター。このコーヒーチケット、まだ使えますか?
小野井:どれどれ?
はい。ご利用いただけます。
亜美:じゃあ、ウインナーコーヒーとリオールブラックをこのチケットで。
晴也:亜美。何か、”アカノワール”って言う期間限定品があるみたいだぞ?
亜美:そうね。クロノワールのサクランボ味みたい。
小野井:そうですね。甘酸っぱいクロノワールもアリかなと思いまして、この度、期間限定で用意させていただきました。
亜美:では、私はそれも一緒に。
晴也:私は、サンドウィッチセットの小倉餡(おぐらあん)を。
小野井:かしこまりました。お待ちくださいませ。
N:久々に訪れるこの店は、以前とは何も変わっていない。落ち着いた雰囲気に5つほどのテーブル席。7個あるカウンター席。額縁(がくぶち)に飾ってある絵が数点あり、花が飾られている。どうやら、造花ではなく本物のお花のようだ。
小野井:お待たせしました。ウィンナーコーヒーとリオールブラックでございます。サンドウィッチセットとアカノワールはもう少々お待ちください。
晴也:俺、この雰囲気の店好きだなぁ~。小さいころに、よく親父とこんな感じの喫茶店を巡っていたんだよ。
残念ながら、行きつけの店はもう無いけど。
亜美:そのお話は初耳ね。あなたも喫茶店巡りしていたの?
晴也:まぁね。親父自身がコーヒー好きでさ。よく連れていかれてたんだよ。
小野井:(夫婦仲は良好のようで。なによりなにより。)
N:晴也曰く、喫茶店は好きなようで。仕事の合間にも休憩がてら利用しているほどだそうだ。ブラックコーヒーがお気に入りのようで、その店限定の名称が付けられたものには目が無いそうだ。
亜美:だから、リオールブラックを頼んだのね。
晴也:そういうこと。
小野井:お客様、お待たせしました。アカノワール、サンドウィッチセットの小倉餡でございます。
晴也:ありがとうございます。
亜美;ありがとうございます♡いただきます。
小野井:(思い出しますね、彼女が初来店されたあの日の事。今でも鮮明に覚えております。)
晴也:うん!美味しい!
リオールブラックが、甘い味の料理に合うこと合うこと!これくらいの苦さが最高なんだよ。
亜美:ウィンナーコーヒーと言ったら、やっぱりここのお店よね。
”あの時の記憶が甦る(よみがえる)わ”
それに、アカノワールもサクランボの風味が効いていておいしいです。見た目も可愛くて、気に入っちゃいそうです♪
小野井:喜んでいただけて光栄です。
亜美:あなた。実はね?
晴也:ん?どうした??
亜美:この日のために、コーヒーチケットを買いなおしていたの。
前、何か郵便が届いていたでしょ?チケットが入っていたって。
晴也:そういえば、見知らぬ名前に住所だったなぁ。
電話で予約でもしたのか?
亜美:そういうこと。
あなた、ごめんなさい。
晴也:いやいや、気にすることはないさ。
マスター。こちらこそいろいろとご迷惑をおかけしました。
小野井:いえいえ。お気になさらず。
N:軽く談笑をする3名。
いつしか、話は夫婦の馴れ初め話に。
亜美:マスター。
小野井:はい。
亜美:まだ、私たちの馴れ初めを話していませんでしたよね?
小野井:確かに。まだお尋ねしていませんでしたね。
晴也:私の方からご説明させてください。
小野井:えぇ、どうぞ。
亜美:あなた、お願いします。
N:晴也から、2人の出会いのお話が語り始められた。
2人の出会いのきっかけは、今から4年ほど前のこと。マスターからのアドバイスを受け、亜美の家で忘年会が開かれた。その際の出席者の一人が彼。その日は彼女とそこまで話をすることはなかったのだが、どうも話し足りなかったようで。お開きの後、電話をしたそうだ。
晴也:お疲れ様です、野田です。
亜美:長谷川です。お疲れ様です。
晴也:本日は、どうもありがとうございました。
亜美:こちらこそ、ありがとうございました。
晴也:…実は、少しお願いが。
亜美:何でしょう?
晴也:会は楽しかったのですが、あまり貴女とお話が出来ていなかったので。
亜美:そうですね、あまり言葉を交わせませんでしたね。
晴也:今度、2人で食事かお茶にでも行きませんか?
”もっと貴女とお話がしたいのです”
亜美:えぇ、喜んで。
私でよろしければ。
晴也:…!ありがとうございます!!
スケジュールの方は、追って相談しましょう。
亜美:うふふ♡
”楽しみにしています♡”
N:それから数日後。2人は近くのカフェでお茶を嗜んだ(たしなんだ)。
晴也:ということなんです。
亜美:それは大変でしたでしょう。
晴也:ま、お互いさまってことで。
亜美:うふふ♡
晴也:アハハ。
(そろそろ時間だなぁ。あっという間だったなぁ~。)
亜美:どうかしました?
晴也:あ、あの…。
”貴女とお話をしているととても楽しくて、もっともっと話をしたいなぁ”と。
”もっと一緒に居たいなぁ”(※ポソッ)
亜美:”私の方こそ、もっと楽しく会話したいなぁ~。”
晴也:付き合ってください!
亜美:え?
晴也:”私と付き合ってください!お願いします!”
亜美:え?!
え、えぇ。はい…。
晴也:?!
亜美:こ、こんな私でいいのなら。
晴也:!
亜美:唐突過ぎてびっくりしたわ。
”こちらこそ、お願いしますね♡”
晴也:…は、
”はい!!”
N:それから数年後、2人は無事にゴールイン。マスターの提案が綺麗にはまったのだ。
晴也:というわけです。
小野井:なるほど。そのようないきさつがあったのですね。
亜美:すべては、マスターのおかげです。
小野井:だから、私は特に何も。
晴也:マスターのおかげです。ありがとうございます。
N:その後も会話が弾み、お会計に。
すると、2人は小声で何かを話し合っていた。
亜美:(ねぇ、あなた。)
晴也:(ん?どうした??)
亜美:(マスターに感謝の気持ちを伝えたいんだけど…。)
晴也:(アレ、したいのか?いいぞ?
命の恩人なんだろ?だったら、尚更さ。)
亜美:(あなた、ありがとう)
小野井:では、会計をお願いします。
晴也:アカノワールとサンドウィッチ分。コーヒー代はさっきのチケットで。
小野井:確かに、お預かりしました。おつりとレシートをどうぞ。
晴也:ありがとうございます。
亜美:マスター。
小野井:はい、何でしょう?
亜美:少し窓の方を見ていただいてもよろしでしょうか?
小野井:あ、はい。かしこまりました。
N:小野井が窓を向く。
”亜美の唇が小野井の頬に触れる”
亜美:chu♡(※軽めのリップ音)
小野井:!!
晴也:貴方へのお気持ちです。
受け取ってやってください。
亜美:”マスター。ありがとう♡”
(※小野井の耳元で囁くように)
晴也:また来ますね。
亜美:マスター、行ってきます。
小野井:”ありがとうございます。
またのご来店、お待ちしております!”
(亜美様。お気持ち、確かに受け取りました。)
N:マスターの近況報告、めでたしめでたし。
マスターの近況報告 ~マスターの相談喫茶 外伝~
訂正情報
・12月28日(月) 本文を一部修正