いちごみるく

その日は、夜遅くて、とても疲れていた。けれど、全然眠れなくて。
ベットに横になって、ぼんやりとスマホを触りながら、ふと見つけた広告に書いてあった言葉に惹かれた。
『僕の声で寝ていきませんか?』
声だけを聞ける、最近よくある配信アプリだ。
普段の自分なら、全く興味もないし、気にも留めない。けれど、今日は、少しだけ気になった。
明日が休みで、日常に、ちょっとだけ刺激が欲しかった。
だから、インストールして、分からないまま、アプリを起動して、ニックネームを入力した。
適当なところで、生放送をしているところに入る。寝落ちと書いていたから、多分大丈夫だ。
「いらっしゃい。お、初見さんだ。」
そんな風に声が聞こえて、続けて、
「いちごみるくさん。めっちゃ名前、可愛いね?良かったらコメントしてねー。」
と、緩く言われたので、挨拶だけ打ち込む。
コメントだと、とても素っ気ない感じだ。
「ありがとー。こんばんはー。学生さんか社会人さんか分からないけど、今日も一日お疲れ様。」
たったそれだけ。
後から知ったけれど、普通に社交辞令だった。それは、その時だって分かっていたけれど、でも、本当に嬉しくて。
だから、気づけば、自分でも配信をしてて、三ヶ月にはなろうとしていた。
殆ど、初見さんなんて来ないけれど。相変わらず、人数は増えないけれど。
それでも、居着いてくれる人はいて、ファンでいてくれる人もいる。
そして何より。
『今日も一番乗りじゃね?』
「………早すぎるよ。」
初めて行った枠主のお兄さんは、自分のリスナーになった。
毎日配信しているが、ほぼ毎日必ず来るし、来ない時は、違うSNSを通じて連絡までしてくるマメなお兄さんだった。
『みるくの配信、楽しいもん。』
固定のリスナーしか来ない、ダラダラと話しているだけの枠なのに、この人は気に入っているらしい。
「ありがとう。」
素直に嬉しい。このお兄さんの配信はとても好きだったから。その人に楽しいと言われて、嬉しくないはずがない。
最近では、可愛いね、素敵だね、と言って下さる方がいて、少しだけキラキラと、自分の非日常が輝いている。
それが、心地良い。
『で、今日は、何の話をする?』
「んー、どうしようかな。」
そんなやり取りが当たり前にできて、少しだけ可愛くなる努力をして、コメントを拾って、また、ゆるりと枠を終える。
(キラキラがいっぱい。)
優しい言葉に、温かい声。嬉しいことが沢山あって、そのたびに、キラキラした輝きが満たされていく気がした。
だから、小さく笑う。

「ふふ、なんだか、スプーンで掬って、キラキラを集めてるみたい、」

面白くなって、彼女は、また笑う。
そうして、灯りを消して、ベットに潜り込む。

『いらっしゃいませ。いちごみるくと一緒に、甘く緩くお喋りしていきませんか?』

明日も、何処かの誰かの枠で、そんな声が聞こえているかもしれません。

いちごみるく

また、クリスマスに投稿になってしまいました。
友達にお題をもらって書いたものですが、本当に久しぶりに小説を書いたので、更に稚拙になっている気がします(笑)

いちごみるく、甘くて美味しいですね!

いちごみるく

『僕の声で寝ていきませんか?』

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-25

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