By You, By Me

ゆるさないことで救われることがあったとして

そんなことがあったとして

ゆるさないという意思を

わたしは貫き通すことができるのだろうか

絶対にゆるさないことが

ゆるせないことが自分のなかにひとつあったとして

そんなことがあったとして

そんなものをいつまでも抱えていることで

わたしはほんとうに救われるのだろうか

ひとにゆるせないこと、そして自分にゆるせないこと

どちらが自分をより苦しめるだろうか

苦しみ抜いた先にしか救いはないということを

わたしは誰よりも知っているつもりだった

自分の苦しみを蔑ろにしてまで

ひとの苦しみを背負い込もうとしていた

それこそが、自分の苦しみなんだとでもいうように

ただ、それは半分正解で、半分外れていた。

自分の苦しみに対して目を背けるということをしてはいけなかった

ひとと自分の苦しみを秤にかけるなんてことをしてはいけなかった

ひとにも自分にもゆるせないことがただひとつあるとするならば、それは

自分が自分の苦しみを、あなたがあなたの苦しみを

受け入れないこと、それだけだった

ひとに受け入れてもらうことで

はじめて自分の苦しみを受け入れられるということだってある

自分の苦しみを受け入れることではじめて

相手の苦しみも受け入れられるこということだってある

あなたの苦しみは、あなただけのものだ

ただ、あなたの苦しみに寄り添いたいというこの気持ちは

誰にも負けない。あなたにも負けない。

負けるわけにはいかない。なぜなら、

苦しみのほんとうの根源は、共有相手の不在だということに気づいたから

苦しみは消すことはできなくても、和らげることはできることに気づいたから

ひとりでいた時にわたしを苛んだ愚問や憶測も

あなたは笑わずに受け止めてくれたから

ひとりで真実に行き着くことなど わたしにはできなかっただろうから

そしてなにより、嘘偽りなく、

わたしはあなたに出会えて ほんとうにしあわせだったから。

By You, By Me

By You, By Me

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-24

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted