白い教室
わたしは板書をとっている最中だった
誰もいない教室の真ん中で
誰が書いたのかわからない板書を。
これを書いた先生はどこにいったのだろう
これを書いた理由はいったい何なのだろう
これが本当に書きたかったことなのだろうか
これが書きたかったことのすべてなのだろうか
これは誰に向けて遺したことばなのだろうか
誰に向けて遺したことばでもないのだろうか
誰もいない黒板を前に、わたしは途方もない自問を重ねる
誰が書いたかとか、誰に向けて書いたかとか
そんなことはどうでもいいように思えた
そんなことに気を取られている間もなく
わたしはその板書をはじめて前にした時
救われたような心地を味わったのだから。
わたしが無心にそれを書き写している時
救われたような心地を味わったのだから。
誰が書いたのかわからないそのことばに
わたしはいつまでも、いつまでも生かされていたのだから。
白い教室