白い教室

わたしは板書をとっている最中だった

誰もいない教室の真ん中で

誰が書いたのかわからない板書を。

これを書いた先生はどこにいったのだろう

これを書いた理由はいったい何なのだろう

これが本当に書きたかったことなのだろうか

これが書きたかったことのすべてなのだろうか

これは誰に向けて遺したことばなのだろうか

誰に向けて遺したことばでもないのだろうか

誰もいない黒板を前に、わたしは途方もない自問を重ねる

誰が書いたかとか、誰に向けて書いたかとか

そんなことはどうでもいいように思えた

そんなことに気を取られている間もなく

わたしはその板書をはじめて前にした時

救われたような心地を味わったのだから。

わたしが無心にそれを書き写している時

救われたような心地を味わったのだから。

誰が書いたのかわからないそのことばに

わたしはいつまでも、いつまでも生かされていたのだから。

白い教室

白い教室

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-23

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