神さま
祈りを奪われてしまったきみよ
きのう買ったばかりの一条の あたらしい
雪白のロープを握りしめ
なにかに追われるように きみは
雨のなかへ飛び出した
薄墨いろの雨を降らす あの
雲のむこうにまします
ああ 神さまよ
濡れた鉄紺いろの
ひときれの石のうえに
よろよろと立ったきみが流す
さいごの そして ほんとうの
ひとしずくの涙をもらおう
祈りを奪われてしまったきみよ
きみがロープをかける この
一腕の桜の木の枝が折れないことを
わたしはいま こころから祈る
そうだ きょうほんとうに
きみは祈りを失ってしまう
神さま