失色眼

…だとしたら、このまま煢然として

時間を食い潰していくほかはないのか。

膨大に思えるのは、それがいつまでも灰色だからだ。

どうしようもなく、それがいつまでも灰色だからだ。

いまさらだ。いまさら誰に何を希おうというのだ。

希おうと思うほど、おれはほんとうに飢えているのか?

何に飢えているというのか?色彩か?

単調な日々からの脱却か?荏苒とした日々の転覆か?

そんなに起伏が恋しいか?そんなに刺激が恋しいか?

誰かを、何かを欺いてまで、おれは安楽を得たいのか?

そうまでして得た安楽を、おれは最後まで手放さずにいられるのか?

馬鹿な。変わらないものなど、最初から何ひとつありはしなかったのだ。

おれは今になって漸く思い知らされた。皮肉なことに。

不幸とは、幸福に慣れてしまうことだということに。

不幸に慣れてしまえば、それはもはや不幸ですらないということに。

すべては慢心による弊害だ。軽視してきたものからの応酬だ。

もう抵抗する気力もない、甘んじてその因果を受け入れよう。

刺激も、色彩も、不幸も、幸福も、感情も、何もかも要らなくなったこの夜に。

失色眼

失色眼

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-18

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