失色眼
…だとしたら、このまま煢然として
時間を食い潰していくほかはないのか。
膨大に思えるのは、それがいつまでも灰色だからだ。
どうしようもなく、それがいつまでも灰色だからだ。
いまさらだ。いまさら誰に何を希おうというのだ。
希おうと思うほど、おれはほんとうに飢えているのか?
何に飢えているというのか?色彩か?
単調な日々からの脱却か?荏苒とした日々の転覆か?
そんなに起伏が恋しいか?そんなに刺激が恋しいか?
誰かを、何かを欺いてまで、おれは安楽を得たいのか?
そうまでして得た安楽を、おれは最後まで手放さずにいられるのか?
馬鹿な。変わらないものなど、最初から何ひとつありはしなかったのだ。
おれは今になって漸く思い知らされた。皮肉なことに。
不幸とは、幸福に慣れてしまうことだということに。
不幸に慣れてしまえば、それはもはや不幸ですらないということに。
すべては慢心による弊害だ。軽視してきたものからの応酬だ。
もう抵抗する気力もない、甘んじてその因果を受け入れよう。
刺激も、色彩も、不幸も、幸福も、感情も、何もかも要らなくなったこの夜に。
失色眼