なにもないのに

 ひとが悪夢を望むのは、自衛のためなのか、あるいは自刃のためなのか。それはただ一度だけ現れて、いつまでも終わらないものだ。だが、涙が枯れることはない。渇望が癒えぬうちは。甘く腐っていくことに安らぎを覚えてからは、冷たい寝床を求めていた。やさしいものは、すべからく残酷だ。なによりも、大虐殺の後に残された、廃墟の星はうつくしい。

なにもないのに

なにもないのに

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-15

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