ヴィーナスとディーヴァ

これちかうじょう

たまに柳瀬橋と喋ってみる俺である。

その後の話、その後の鼻血

「でもさあ、あんな恥ずかしいこと中村もしてたんだなあって思ったら、
 俺、並大抵のことは我慢できるような気がしてきたよ」
時々柳瀬橋はダイレクトです。
「おい待て、俺が何したって」
「エッチ」
「ば、馬鹿じゃねえの!やめてよやめてよ、昼間っからこんな話!
 隣の猪瀬に聞かれたら俺死んじゃう」
そう、ここは保健室です。
カーテンで仕切られているけれど、その中で俺は自主学習中の柳瀬橋とお喋りしています。
柳瀬橋はさらさらと問題を解いている中で、ついで的に話をしています。

「藤原先輩、優しかった?」
「おい」
「でもあんなでっかい人とできるんかなあって不思議なんだけど」
「…おーい、声がでかい」
「でもあんな綺麗な人とできるって倖せじゃね?お前すんごいわ」
「…じゃあ聞くけど」
俺の、反論。
「お前は橘としたんだろ、橘とはどうだったの」
「えー?ふつー」
「普通じゃねえだろ、ほら、気持ちよかったとかあんだろ、何か、感想が」
「…だから、恥ずかしかったって」
「何でだよ、俺なんか最初無理やりだぞ、犯罪めいたもんだったんだぞ」
「すっぽんぽん」
「は?」
「人前で裸になるのは恥ずかしー」
馬鹿かお前は、と俺は頭を掻いた。
「修学旅行で一緒に風呂入ったじゃん、俺ら」
「中村の前では何でもできるよ」
「何それ」
「でも駄目、橘の前だと恥ずかしい」
「おまえはー!こんな端正な顔立ちしてて何が恥ずかしいんじゃ!」
「ういー」
柳瀬橋の頬をつねりながら、俺は考える。
結ちゃんと柳瀬橋だったら、釣り合うっていうか…。
顔立ち的に。
いやいや、待て待て。
そんなの俺が許さん。

「でも、この前さ、言われたんだよね」
「うん?」
「もう一回しようって。今度はちゃんと俺のこと考えてするからって」
「ほー」
「ほら俺、まだ足が完全に動かないじゃん?この前だって頭の中に腫瘍があったわけだし、
 それって完全な姿じゃなかったっていうか。
 それを考えて、ちゃんと相手のことを考えてするのが、ちゃんとしたお付き合いだって、
 橘がそう言うんだ」
「うん」
「相手のことを考えて何でもやってくのが恋愛だって分かった。でもたまには自分のことも考えるけどさ。
 それはさ、橘から教わる前に、俺、中村から教わったんだぜ」
「俺から?」
「うん。中村と藤原先輩を見てると、ああ、思い合ってるなあって思う。相手を思いやってる。
 特に藤原先輩な、あの人はすごい。自分のこと投げうってでも、きっと中村のこと考えてくれてる」
「…そうかな」
ご飯、くれることとか?
という低次元な俺なんである。
「この前外周走ってたの見てたんだけど。追い越すときにお前の頭、ぽんぽんってするじゃん?
 あれって、すんげえかっけえの」
「え、されてたかな」
「本当はケツでも触りたいんじゃないの、あはは」
そんなことされてたかな。
でも、でも。
「俺、言われちゃったんだ柳瀬橋」
「ん?」
「ちゃんとしようって。前みたいにじゃなくて、ちゃんとしようって」
「うん、しなしな」
「軽いな」
「俺もするし。中村もするし。それって普通のことだろ?でもまずは俺、キスに慣れなくちゃ。
 橘ってさ、俺に合わせてかるーくしかしないから」
「…」
俺は思い出している。
何がしたいのかと聞かれたことがあった。
毎日1回はキスをしていると言う柳瀬橋が羨ましくて、キスをねだったことがあった。
その時のキスが忘れられないでいる。
あれがディープキスなんだと今なら分かるけど。

「中村」
「あんだよ」
「鼻血出てる」

ヴィーナスとディーヴァ

柳瀬橋と喋るのは、やっぱり楽しいけど、
内容がだんだん濃くなって行くような気がしてならない。

ヴィーナスとディーヴァ

柳瀬橋(ヴィーナス)と冬至(ディーヴァ)の会話です。

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