バカオタ篇其の2

これちかうじょう

  1. 若葉ちゃんコネクション
  2. 痛みを与える者

若葉ちゃんです。
可愛いAIの登場です。

若葉ちゃんコネクション

「旬、これ見て」
「はい…?」
結局、僕は年下に、しかも後継者となる人間に名前呼びされています。
イーストに度々というか、毎日来るのは当たり前なんだけど、
今までは1人でやっていたことを、誰かと一緒にするのは、ちょっと困る。

「ほら、これ」
「わ、女の子ですね」
「若葉ちゃんってんだ、若葉ちゃん、旬に挨拶して」
「え」
画面の中に、小学生くらいの女の子が映っている。
その子がぺこりとお辞儀して、にこにこして、こう言った。
「旬ちゃんはじめまして!若葉ちゃんです!」
「嘘!喋るんですか!」
「若葉ちゃんは俺が作ったAIなんだけどさ、まあ、相棒的な?これでじゃんじゃん荒稼ぎしてたんだよ俺」
「すごいですすごいです!」
「なあ若葉ちゃん、ちくっとハッキングの極意を旬に教えてやってよ」
「りょーかいです!若葉ちゃん、ハッキング開始ー」
え、え、と僕は目の前の女の子にくぎ付けになる。
まさか、僕がやりたくてやりたくて仕方なかった、AI開発をこの子がもうやってたなんて。

「それからさ、旬、俺には敬語なしね」
「はい?」
「だからそれ駄目!俺だって敬語なしで喋ってんだから、タメで話してくんなきゃ」
「い、いえ…その、僕はこの喋り方しかできないんですけど」
「普通に喋れ!」
「…う、うん、努力する」
天野君みたいに話せばいいんだよね?うん。

「ねえ翔吾、若葉ちゃんはどんなOSとか搭載してるの」
「そんな野暮な話すんなよ、若葉ちゃんは実体こそなけれど、立派なレディなんだぜ」
「AIなんでしょ?それなりにシステム構築しないと」
「まあ、強いて言えば勝手に自分で成長してくタイプにした。最初は国語とか算数とか教えて、
 その後は自分で学習できるようにありったけのソフトを投入したっけか。
 もう1人欲しいなって思ってるんだけど、そこまで時間ないしさ、今の俺って。
 高校生は忙しいのよ」
「…でもハッキングはよくないよ」
「仮想通貨なら俺、国を買えるくらい持ってんだぜ。そだ、あとで何かおごってやんよ」
「…あのねえ」

それより、と僕は敵の話、イーストの話を翔吾にした。
敵はノースと呼ばれる存在で、半年前に一度大きな戦いがあったこと。
そこで主砲だった深沢さんが倒れてしまったこと。
それ以来、僕が毎日索敵だけして、自分が主砲と補佐を兼任していることを話した。

「その深沢って人のこと好きだったんか」
「は?」
「まあいいけど。でもそれは旬が悪いってわけじゃないんだろ、全部ノースが悪い。
 それにどんな攻撃されて実体に影響があんの?
 普通、電磁波くらいだったら目がしぱしぱするくらいっしょ」
「…向こうが送ってくる電気信号は脳に直接響いてくる。例えばこれ、向こうが今まで使ってきた武器を、
 カスタマイズしたものなんだけど」
「…マサムネ?あの正宗かよ」
「それとこれも」
「ロンギヌス?何これ、神話に出てくる武器じゃん」
他にもいろいろあるんだけど、それを画面を通して脳に直接攻撃を受けることだけは分かってもらった。
主砲だって、その席に座っているだけで、操縦桿を通して攻撃を受けることを。
補佐はその痛みを中和するために電気的な薬とかを使うんだけど、
それはまたあとの話。

「若葉ちゃん、どう?使えそう?」
「はいー、ロンギヌスは使えないっぽいですけど、マサムネはコンプリートしました。
 それとさごじょうのやりも、神の扇もインストールしてみました」
「よしよし、これでハッキングに使える…」

「翔吾!」

おいおい、と僕は頭を抱える。

痛みを与える者

ノースとは誰なのか、というか、誰なのかというか、人なんだろうか?
という問題が僕の頭の中にぐるぐるとしている。
最初は、青陵のデータベースにハッキングを仕掛けている組織があるんだと思っていた。
一応、見られちゃまずい情報とかあるみたいで、
学院長の指示なしでは開けられない鍵もあるけれど、
その他に今の司令塔にも従うのが、主砲である僕の役目だ。

「今日は雨だったから」
天野君が地下室にやってきた。
そう、生徒会副会長の天野君こそが、現司令塔である。
「あれ、高瀬だけじゃないのか?君は」
「俺は不破翔吾っていいまーす」
「不破…ああ、五典先輩から聞いてたけど、君がホープなんだって?高瀬もよかったね、
 いろいろ同じ話題で盛り上がれる人と一緒にいれて」
「…それはそれで屈辱なんですが」
で、冒頭に戻るけれど。
「雨だと何かあるんですか天野君」
「ああ、雨だとね、彼の調子がいいもんだから、今日は部活に励んでるって話」
「彼?」
「うん、ちょっと気になる子がいてね。書道部のエースなんだけど、体が弱くって。
 将来的には生徒会に入ってもらいたい人材でもあるし」
「へえ…」
「それって猪瀬ってやつっしょ、猪瀬大地。書道部は俺の華道部の横の部室だからさ、
 知ってるんだよねー」
猪瀬大地。
僕はそこで初めてその名前を知ることになる。

「それよりどう?最近はずっと来れなくてごめんね高瀬」
「大丈夫です、索敵にも引っかからないですし…それに翔吾が罠とか仕掛けてくれてるんで、
 何かあったら若葉ちゃんも教えてくれます」
「罠?若葉ちゃん?」
僕は天野君に若葉ちゃんのことを話した。
「すごいんです、翔吾はAI作っちゃってるんです!しかも自立的な成長タイプのAIで…」
「そんでね天野先輩、俺と旬でもう1人AI作ろうって話になってるんだぜ」
「…」
「天野君?」
「天野先輩?」
びっくりしているかと思ったら、急に天野君が吹き出した。
「あの、天野君?」
「いや、ごめん、ごめん、高瀬と不破があんまりにも仲良しなんで、僕の入るスキがないなーって」
「な!」
「そうだろそうだろ、俺と旬は絆があんだぜ」
僕は真っ赤になってしまった。
そんなに仲良しか?天野君以外の人間と仲良しになるなんて、
僕には信じられないことなんだけれど。
「それより、そろそろかもしれない」
「翔吾?」
「この前仕掛けておいたトラップに足跡があったんだ。引っ掛かりはしなかったけど、
 あれはこっちを見に来たって証拠だし…覚悟した方がいいかもな」
痛みを与える者、ノース。
僕は再び深沢さんの二の舞になることを、少し感じていた。

バカオタ篇其の2

イースト対ノースの戦い。
それの序盤戦です。

バカオタ篇其の2

イースト対ノースの戦い。 それの序盤戦です。

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