ヤンキーをパルチザンで殴ると死ぬ

らっきょ太郎

 ガスが減っていたから僕はガスを入れに休所に歩いて向かっていた。今日は土曜日でそれなりに天気のいい日だった。日差しがない灰色のお空の下、道端ですれ違った18人のカップルはニコニコと笑っていた。休所にあと五分で到着するなと思った時である。僕の名前を呼ぶ声が背後から聞こえた。振り向くと同じクラスのアだった。アは自分の首を指して「お前もガスを入れに?」と言った。首には黒いビール瓶の蓋程度の大きさの穴が黒いゴムで塞がれていた。
 僕はコクリと頷いた。
 アは軽く笑って「せっかくの休みだって言うのにどうしてわざわざガスを? くっそ面倒くさいなあ。どうせなら学校の日に行きたいよね」と言った。
 僕はあまりアとは話したことがなかったから話題に困った。それで適当に考えて話すことにした。
「それは仕方がない事だ。僕たちは頭が悪いからな。補習が比較的に大いにある。しかし、それを全て僕たちの所為にすべきであろうか? 学校の教職員にも責任があると僕は思う。最近の授業を思い出してくれたまえ。非常に回線が混んでいると思う。1人の担任の教師が喋り、それを複数人のクラスメイトが情報を得る。昔なら簡単に行えたと思うが、一つの授業にとっても愛や友情、ニワトリが三本足で無い事や、酸素その吸い方まで手取り足取り教えないといけないのだ。そうしないと、クラスメイトの幾人かがグレて不良になるからだ。だが、こうも思う。数人の『幾人』かが不良になって何か問題があるか? その不良が学校に来なくなるのは時間の問題だろう。それほどまでにして教育に熱心に行う意味が分からん」と述べた後に「今日は天気がいいですね」と付け加えた。
 アは僕の内容を聞いてから「ちょっと待って、お前が話した内容をインターネットで検索するから」と言って携帯電話を胸ポケットから取り出し、検索を始めた。15分程度アは検索をして僕の方を見ながら「う~ん。検索をしたんだけど。愛は恋愛感情で友情は友だちとの距離感でニワトリは二本足らしいよ。酸素は血液に取り込まれて脳みそに常に入れ続けないとダメだって。でさ。この『不良』ってどうやら半世紀前に絶滅したらしいよ。あんまり詳しく書いてある記事を見つけられなかったけど、目つきが悪くてガンを飛ばす。教職に反抗的、小型二輪から大型二輪の乗り物が好きってある。あまり理解が出来ないけど、この教職に反抗的ってどういう意味だろう?」アはそのように言って胸ポケットに携帯電話を入れて「本当に天気がいいと思います」と答えた。
「教職員との考え方に逆らう事だ」
 僕は言った。
「考え方に逆らう?」アはそう言ってから携帯電話を取り出して検索を始めた。その様子を見て僕はアに「川の流れと逆に泳ぐような奴さ」と言った。
 するとアはキョトンとした顔で「どうして川の流れと逆に泳ぐんだ? 馬鹿だなあ」と言った。
 それで僕とアは休所に行き東屋に設置してある機械の前に立って赤いボタンを押した。ブルウン、ブルウン、と音が鳴る。それからチューブを引っ張て、首にある黒いゴムの蓋を外す。
「ガス入れたら、気分は良くなるんだけど、クラクラするんだよな」
 アは言った。
 僕は黙った。それで「僕は今日、ガスは入れない」と言った。
「え? なんで?」
「気分じゃないんだ」
「気分じゃないんだって?」
「ああ」
 アは僕の言葉に対して時間を置いてから「アアシカエ、ガスを注入しなくて124時間が経つ。『24』時間のオーバーだ。推奨の時間は過ぎている。遅くて90時間だ。これで警告は3度目だ。そしてこれが最後の警告となる。ガスを注入しろ。でなければ、アアシカエを『不良』と認識する」と低い声で言った。
「川の流れと逆に泳ぐのはダメかい」
 僕は笑って言う。
「アアシカエ! ガスを注入しろ!!」
 大雨が休所を打ち叩いた。ドンヨリとした東屋の中で赤い瞳に光るアの目が僕を睨んでいる。
「嫌だね」
 僕がそう答えた時、休所を18人の男女が囲んでいた。さっき僕がすれ違ったカップルだった。全員黒いコートを身に着けていた。
「最初からやるき満々じゃん」
 アは言った。
「排除しろ」
 18人の男女は黙ったまま左手から黄色に光る槍を生成した。電信柱がショートしたバチバチとした音を鳴らす。アは胸ポケットから携帯電話を取り出して画面を見ながら言った。
「ヤンキーをパルチザンで殴ると死ぬ」

ヤンキーをパルチザンで殴ると死ぬ

ヤンキーをパルチザンで殴ると死ぬ

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