声なき声

ハイミドリ

  1. 二人の偉人
  2. はんぶんこ
  3. 語りうるもの
  4. まだ少年の君へ
  5. 鍵と錠
  6. 交換日記
  7. 適音滴度

使いようがなければ捨てるだけ

二人の偉人

「後生だから」と差し出された紙切れに
何の意味があったのか私は知りたくない

今日食べるものも探せない
プライドなど持っている暇もない
左肩の真っ赤な痣が身勝手に手を引く
年老いたその手と偉人の肖像画が
私を生き延びさせるには仕方のないこと

今一瞬、考えていることを止めて
偉人を引き渡されれば私は自由の身

お前はいいよな
再利用先があってさ

はんぶんこ

いつか来るさよなら

必ず訪れるこんにちは

きっと似た者同士

だってまだここにいるから
これからここに来るかもしれないから

空の下がみんな繋がってるなら
空の上にも繋がっているね

たった一人
されど一人


なぜかな
無性にあなたのところまで届くように
叫びたい

大好きだよって
息を切らしたって転んだって

抱きしめて

語りうるもの

沈黙を行う時に夢があり
発言により夢は可視化する

可視化した夢は行動により現に転じ
他人が欲しがる理想へ昇華する

あなたの夢が現に転変するときは近い

まだ少年の君へ

君へのメッセージは簡潔にするね

少年から青年へ羽化する過程は
誰しもが通る道
心配しなくても君を認めて恋する娘は
腐るほど出てくるだろう
焦ると足元を見られるから
決して安売りしないように





以下、蛇足





私は受験校の門前で
滑って転んで起き上がれもしなかった恥ずかしい子て
手を差し伸べた少年に出会って助けられた
それから3年間手を繋ぐ事になるとは
全く思いもしなかったな

クラスメイトのアイツにはいつも
ちょっかいを出されたからやり返してた
私はあまり他者を認識しないけど
あんなに無邪気に「俺を見て」って
やってきた人は初めてだったから
胸の傷跡も含めて彼を覚えてる

元々体があまり強くないから
ある日保健室に向かっている途中に
転校してきて生徒玄関に立っていた
先輩に出会ったけど
偶然とは言えないタイミングで驚いた
今まで秘密にしてたけど実は
彼は私が最初の人で
私も彼が最初の人なんだよ
すごく痛くて気を失いそうだった
でも初めてだったって言ったから
許してあげたの
彼氏がいたのにね
だけどなぜか彼氏に嘘ついてまで
先輩を庇っちゃった

幼馴染は
保育所の頃から高校卒業まで一緒にいて
親しく思っていたけど
それが恋なのか実はよく分からなかったよ
高校卒業した夏に交通事故で
死んでしまったから
悲しみで美化したのかもしれないね


さっきの先輩とどんな約束をしたのか
具体的にはよく覚えてないのだけど
彼が町を離れる前に
少し話をしたのを覚えているよ
だからあの時見つけて来てくれたんじゃないのかなと
私は思ってる


時系列にまとめてみたりして



好きだと思う人には
例え間違ったとしても
真っ直ぐ好きだとぶつかって行ってほしい
例えその時上手くいかなくても
傷が癒えた時に出会った人への
新たなアプローチになるんだから


あなたには必ずよい人と巡り会うだけの
器量も気概もユニークさも
持ち合わせていることを知ってるよ

だからヒントをあげる
ここまで読んだご褒美です


愛らしい女性には情熱を持って誠実であれ

賢い女性にはユーモラスでいながら包容力を

ズルい女性には甘え上手にキザであれ

病んでる女性には守るのではなく共に戦え

強い女性には1番の親友であれ

鍵と錠

あなたと2人だけの部屋

1つの小さな窓の向こうは暗い灰色
雲を割って根に似た稲光が伝った後
まるで空を殴るような音が私達を叱りつける

曖昧に苦く笑う私はあなたの胸に安堵していた
小石がぶつかるような雨音と飲み込む唾
衣擦れだけがノイズだった

「雨が降ったら部屋の周りにたくさん鍵をかけられてるみたい」

独り言のように呟いた私に訝しむ視線
ーだってどこにも行けないから
カラリと言うと
肩に感じる握力が強まった気がした

「嫌なのか?」

とでも言いたそうな憮然の鼻に
目を細めて甘えてみせた
どこにも行かないよ
どこにも行きたくない

「ここがいい」

伝えようと口を開いても束の間
熱いくらいの舌で声を塞がれ
服に身体を縛られる

逃がすまいとして私を縛り
喰らうように抱くあなたに感じたのは
怒りでも恐怖でもない

満ち溢れる従属

交換日記

「高校生にもなって」
クラスメイトはそう始めたけど、いい案だと思った。
私とAはHの提案を受け入れることにした。
残り1年の高校生活を有意義にするためなのか
Hは「交換日記を私たちでやろう」と、
シンプルなまっさらなノートを三角形の中心に置いたのだった。

そこには将来の夢…叶うかどうかはさておき
目下懸念事項や単なる独り言が書き足されていった。

それは地元を離れてからも続いた。

段々とつるむ人間が変わっていく中
そのやり取りだけが、懐かしい温かみを発していて
慣れない都会に荒みかけた時には心に沁みた。

ケータイ電話が徐々にスマホになっていった時代。
あえてのアナログのノートで交換日記。

ハツラツとした文字、まるい文字、時々妙な癖がある文字。

筆跡はそのまま私たちの性格を表していたような気がする。
もう、そのノートがどうなったのかは私は知らない。
ほんの少し思うのは
もう一度読み返してみたいなという気持ち。


女というものは「友情」よりも「同志」で繋がるのだと思う。
ここに来て、何かがコトンとおさまった。

適音滴度

雨音が聞こえた
撫でてくれるみたいな音

電子タバコを吸う
しゅーっって煙みたいなのが
肺を満たして吐き出された

デジタル書籍を読んだ
時間があっという間に通り過ぎる


本当は


味なんてわからない
両親が飲んでいて羨ましかっただけ

インスタントだとしても
あなたが淹れてくれるのが嬉しかった

食事の後は向かい合って
決まって一杯
おまけに食器洗いのサービス付き

食事の作り甲斐があるってもの
「「いただきます」」って
時間配分が下手で冷めかけてるのに
あっという間に食べてしまうんだもの

料理の腕なんて気にしたことなかった
味音痴ではないにしろ
自分の料理が特別美味しいわけでもないくらい
作ってる私が一番知ってる

だけど黙々と頬張るその顔見たら
ずっと見ていたくて
かわいくて

「食べないの?」
箸を止めてキョトンとされて初めて
自分がいくらも食べていないことに気づく

遅い時間に
温度を間違えたコーヒーを飲むと
そんな日々を思い出す

声なき声

そうやって人は忘れていく

声なき声

それでも辿る記憶の糸

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日 2020-12-09

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