冬の参道

淡いひかりが蛍のように 左右に整然と浮かんでいる

近づいてみれば それはただの提灯だった

人工蛍に照らされた参道は

永遠のようにも 一瞬のようにも思えた

紙一重の景色はいつだって官能的で

わたしはどうしても その退廃美に惹かれてしまう

きょうの日もいつか、思いだされる情景になる

そのことがわたしには哀しくもあり、また、嬉しくもある

矛盾のない世界なんてつまらないだろうな

生意気にも、そんなことを思う

淡いひかりが蛍のように 左右に整然と浮かんでいる

わたしはそれが その光景が

二度と手に入らないものだと知っている

二度と手に入らないものしかないことを

この目はちゃんと理解している

わたしは蛍をのみこんで、すこしずつ、すこしずつ、淡いひかりに近づいていく

冬の参道

冬の参道

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-07

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