冬の参道
淡いひかりが蛍のように 左右に整然と浮かんでいる
近づいてみれば それはただの提灯だった
人工蛍に照らされた参道は
永遠のようにも 一瞬のようにも思えた
紙一重の景色はいつだって官能的で
わたしはどうしても その退廃美に惹かれてしまう
きょうの日もいつか、思いだされる情景になる
そのことがわたしには哀しくもあり、また、嬉しくもある
矛盾のない世界なんてつまらないだろうな
生意気にも、そんなことを思う
淡いひかりが蛍のように 左右に整然と浮かんでいる
わたしはそれが その光景が
二度と手に入らないものだと知っている
二度と手に入らないものしかないことを
この目はちゃんと理解している
わたしは蛍をのみこんで、すこしずつ、すこしずつ、淡いひかりに近づいていく
冬の参道