アイスクリームパフェ
掘りすすめる。パフェ用の細長い繊細なスプーンでそっと、アイスクリームを崩した。バニラが、とろりと流れる。ざくざくと、散りばめられたフレークを割って、アイスといっしょにたべる。そうしてまた、堀りすすめる。
さいごまで、ゆっくり。
ひくく、ちいさく、おだやかな音楽が流れていて、鼓膜がくすぐられる。べつに、なにもどうにもならないし、いたみも傷も癒えないし、そうだ、まだあれもやってない。でも、パフェを掘りすすめてる。
あまくて、胸が、ぎゅうとくるしくなったところでチョコレートの層。スプーンでそっとすくって、すこし休憩。あまいのはにがて。でもどうしても、パフェを無心で、掘りたくなるときがある、きみは理解ではなく受容がたいせつなのだと、わかっているから、それを放ってコーヒーをのんでいる。いちばんにがいらしいやつ。きみにとっていちばん苦いコーヒーは、どこまでいっても、きみにとってのいちばん。ぼくはそれを、かんたんにのむ。
そういう、ちがい、ぼくはまた、化膿した痕をながめて、それをぐずぐず掘りかえして、それでまた化膿させるのだ。そのくりかえしを、パフェスプーンが可視化する。
意味なんてしらない。べつに意味なんかいらない。ただそうしたいだけで生きていられるうちは、そうする。そのあともずっときみとこうしてたいというこころが、問題なのだとして。
アイスクリームパフェ