アイスクリームパフェ

 掘りすすめる。パフェ用の細長い繊細なスプーンでそっと、アイスクリームを崩した。バニラが、とろりと流れる。ざくざくと、散りばめられたフレークを割って、アイスといっしょにたべる。そうしてまた、堀りすすめる。
 さいごまで、ゆっくり。
 ひくく、ちいさく、おだやかな音楽が流れていて、鼓膜がくすぐられる。べつに、なにもどうにもならないし、いたみも傷も癒えないし、そうだ、まだあれもやってない。でも、パフェを掘りすすめてる。
 あまくて、胸が、ぎゅうとくるしくなったところでチョコレートの層。スプーンでそっとすくって、すこし休憩。あまいのはにがて。でもどうしても、パフェを無心で、掘りたくなるときがある、きみは理解ではなく受容がたいせつなのだと、わかっているから、それを放ってコーヒーをのんでいる。いちばんにがいらしいやつ。きみにとっていちばん苦いコーヒーは、どこまでいっても、きみにとってのいちばん。ぼくはそれを、かんたんにのむ。
 そういう、ちがい、ぼくはまた、化膿した痕をながめて、それをぐずぐず掘りかえして、それでまた化膿させるのだ。そのくりかえしを、パフェスプーンが可視化する。
 意味なんてしらない。べつに意味なんかいらない。ただそうしたいだけで生きていられるうちは、そうする。そのあともずっときみとこうしてたいというこころが、問題なのだとして。

アイスクリームパフェ

アイスクリームパフェ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-07

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND