無謬の丘
懐かしいような冷気の中で目を覚ました
あたりは一夜にして白金色に染め上げられ
銀糸が隙間なく張り巡らされているかのように
さえざえとした耀きを放っていた
わたしはその劫末に ひとり放りだされたような心地でいた
然しそれは わたしがながらく望んでいたことだった
揺るぎない光景に融けあう自分を夢想してきた
もう、何に打ちのめされる心配も緊張もないのだ
ここは無謬の丘
穢されることを知らない聖域
声にならない声が白煙に変わる
境界や障壁のない世界はこんなにも優しいのかと
わたしは心臓で泣いた、哀れなくらいに泣き腫らした
すべてが巨きな、巨きな膜につつまれているようで
その膜の彼方に揺蕩うひとひらを
わたしはいつまでも 走馬灯のように眺めていた
無謬の丘