僕よりも早く

心臓が、ドクンドクン痛くて、ある日起きるとぽっかり穴があいていた。穴から緑色の液体が沢山でてきて、抑えても止まらなくって、手からすり抜けてどんどんどん溢れるように流れ出して。周りには誰もいなくって、僕は一人の部屋で、座り込んでドアを抜けて階段の下にまで流れていく緑の液体をただ見ていることしかできなかった。穴は真っ黒で、奥深くって、丁度胸の真ん中あたり。昨日の夜まで、痛んでた場所あたり。起きたらぽっかり穴が空いて、僕の体の液体が流れ出て全部無くなっちゃうような。触っても、触っても、僕の手がつるつるすべるばっかりで。這いずっても、這いずっても、でも僕の体は少しも溶けなくて。玄関のドアの隙間をすり抜けて、流れていく。緑の液体がどこまでも。きっと僕がモタモタしてたから。あの大きくて広いところに。どこまでも。僕よりも早く。

僕よりも早く

僕よりも早く

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-03

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