絵の具について
絵の具について
浮遊感を実存にまで落とし込んでくれる道具がほしくて、実存に追い込んでくれるのはきみだけでよくて、やがては、酵素反応にちょっとだけ興奮しながら、絵の具チューブの中で、グロテスクに腐ってしまうのだろう。コミカルでぞっとするさびしくないくらいの刺激をちょうだい。
象ることも縁取ることもせず、怠惰に生きて、はじめて知った絶望のこと。イーゼルに凭れかかっている、運命のこと。(人類史の表層をなぞっただけよ)人生が終わりつつあるときの感情ですねこれ。押しつけがましい幸福を今ここで投げ出すよ。金切声の一オクターブ上のきれいなピンクゴールドと、それでも消えない肉の臭み。結局、油絵も好きじゃなかった。恐怖と煩悶、それだけで未来の断面図はああでもこうでもと展開していくし、内臓ぶちまけてるみたいなリアリティなら死ねばいいのにってところだった。絶対的にたった一つの不定形で不逞な感情、ただそれだけの生き物は芸術なんて解せないし、理解するための努力さえも怠るのでしょう? だから決して絵は書かず、絵の具だけに同情するのです。
絵の具について