冬の短歌
とおかんやただの平日過ぎにけり
ビルの隙間は月も見られず
水落つる音に心も落ち着けば
コーヒーの沸く拂沢の滝
若き日の君にひかれて善光寺
変わる祈りの人も変わりぬ
湧き出づる清水はよしや枯るゝとも
神をあがむる心変はらじ
去年の秋荒れし多摩川あらたまの
年の初めの日にぞきらめく
正月の外のベンチで爺一人
鳥と向き合い熱い茶を飲む
冬山は星の光さえ氷りつき
しもばしらの花枯れ草に咲く
天の根の富士も氷れる夜なれば
見上げる星の実にも霜降る
街灯にきらめくようなたむしばの
氷る莟をひとり見上げる
われが見て天地初めてあると思ふ
われもいつかは消ゆる白雪
冬の短歌