冬の短歌

とおかんやただの平日過ぎにけり
ビルの隙間は月も見られず

水落つる音に心も落ち着けば
コーヒーの沸く拂沢の滝

若き日の君にひかれて善光寺
変わる祈りの人も変わりぬ

湧き出づる清水はよしや枯るゝとも
神をあがむる心変はらじ

去年(こぞ)の秋荒れし多摩川あらたまの
年の初めの日にぞきらめく

正月の外のベンチで爺一人
鳥と向き合い熱い茶を飲む

冬山は星の光さえ氷りつき
しもばしらの花枯れ草に咲く

天の根の富士も氷れる夜なれば
見上げる星の実にも霜降る

街灯にきらめくようなたむしばの
氷る莟をひとり見上げる

われが見て天地(あめつち)初めてあると思ふ
われもいつかは消ゆる白雪

冬の短歌

冬の短歌

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-28

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