回帰線について

回帰線について

未来を呪った。ぼくの常識が通用しない、こわい存在だから未来を呪った。いつか、感受性が枯れていくことがないように。だから、未来を呪った。原稿用紙が埋まらないもどかしさだけが残った。もどってくる。いつかまたここにもどってくる。強制送還。左遷。島流し。言い方は何でもいいけど、帰巣本能に連れ去られる。それでもものすごいスピードで地球が回る。だから三半規管がぐるぐるで酔いそうになる。再現性のかたまりが再現性のかたまりであることを嘆く。ホメオスタシスと血小板と、それから感情。万年永遠ずっと恒久なんてのもいやだけど、安直すぎる可逆性も考え物だ、とぼくは小学生に戻っていた。少しずつずれていくくずれていくから居場所にぴったりはまらなくて、それでももどってくるから居場所はない。物理学に拒絶されるなんて、なんて悪いことをしたのでしょう。ぼくには時間の概念がわからない、自己同一性を確立できない、だから一万年後には誰もぼくを覚えていない。ありったけの悪意をこめて、ぼくはぼくのすがってきた過去をdisった。そのついでに、未来を呪った。

回帰線について

回帰線について

ホメオスタシスと血小板と、それから感情。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-23

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