ハンバーガーを片手に明日を憂う二十四時
ねお、と、なまえを、よんでみる。はい、と返事をして、ねおは、夢中になって食べていたハンバーガーから顔を上げ、視線を、ぼくに投げかける。まもなく二十四時、という頃の、ファーストフード店は、なんだか、充足感と、虚しさを、足して、二で割ったような空気が、ただよっている気がする。ほどよい眠気と、それを通り越した興奮。からだはつかれているのに、あたまはさえている。ヘルシー、健康的とは対極の、ジャンクフードを、この時間に食べるという行為への、罪悪感。けれども、ハンバーガーはいつもと変わらぬ味でぼくらの腹を満たし、フライトポテトは魔性的美味さで指に付着した塩を拭くのも忘れる。ねおの、くちびるが、てらてらと光っているのは、油分のせい。ぼくをみつめる、ねおの髪は、夜の闇よりも黒い。きっと、宇宙にそんざいするというブラックホールの、中心の色。ふたつとなりのテーブルにいる、しろくまとにんげんの女の子が、星の寿命について語らっている。
ハンバーガーを片手に明日を憂う二十四時