血液について
血液について
あくまで生きていくこと前提の不安が発火して、仄赤い金属光沢になって表面を形作っていた。ふわっ、とからだが浮く。飛んでいるつもりかもしれないけど、ひょっとしたら光に吸い込まれているだけなのかもしれない。夜の限界と暁の着床がぼくをミクロサイズに縮めた。地平線の終わりを、消失点を、果てしない微分が襲う。行き場がないから、そういうくだらないことにいつまでもこだわるんだよ。オラトリオにリアリティーを与えて、コスモロジーとサイコロジーを攪拌する者のために。両手合わせて十本の指が各々の意識でうねうねと動き、不格好なぼくのてのひらから逃げ出していく。トリップ する 系の やつ。爪ははがれなかった。肺に酸素は循環していたから、空の一部にはなれたんだ。理性が切り詰めた意識と感情に切り捨てられた言語。その辺で爆発して死ねばよかったんだけど、存在を特定できなかったくらいには人間やめていた。相対性理論の限界を、アインシュタインと一緒に嘆いた。ぼくはあの日、たしかに宇宙とつながっていた。
血液について