血液について

血液について

あくまで生きていくこと前提の不安が発火して、仄赤い金属光沢になって表面を形作っていた。ふわっ、とからだが浮く。飛んでいるつもりかもしれないけど、ひょっとしたら光に吸い込まれているだけなのかもしれない。夜の限界と暁の着床がぼくをミクロサイズに縮めた。地平線の終わりを、消失点を、果てしない微分が襲う。行き場がないから、そういうくだらないことにいつまでもこだわるんだよ。オラトリオにリアリティーを与えて、コスモロジーとサイコロジーを攪拌する者のために。両手合わせて十本の指が各々の意識でうねうねと動き、不格好なぼくのてのひらから逃げ出していく。トリップ する 系の やつ。爪ははがれなかった。肺に酸素は循環していたから、空の一部にはなれたんだ。理性が切り詰めた意識と感情に切り捨てられた言語。その辺で爆発して死ねばよかったんだけど、存在を特定できなかったくらいには人間やめていた。相対性理論の限界を、アインシュタインと一緒に嘆いた。ぼくはあの日、たしかに宇宙とつながっていた。

血液について

血液について

地平線の終わりを果てしない微分が襲う。 100作目です。今までもこれからも読んでくれてありがとう。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-18

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