虚言集

​──幸福と降伏って、同じ音をしていますね。
​──崩れていくものの美しさ、あなたにその価値が解りますか?
​──忘却なしでは、人は生きることも死ぬこともできませんよ。

不吉で残酷な循環の中に引き摺り込まれていく
僕は手元の拳銃で自分の頭を何度も撃った
自分の言葉とは思えない言葉を何度も発した
その反復が何を示唆するのか僕には判らなかった
ただ何かに敗北しつづけている感覚だけが心身を支配していった
僕はいつかの自分に置き去りにされているような
嘲笑されているような、裏切られたような気がしてならなかった
僕はもう、認めざるを得ないのか?
自分の自分に対する敗北を、認めざるを得ないのか?
僕の言動の演技性は日を追うごとに深刻になっていった
然しそれはもう今となっては取るに足らない問題だった
結束も協調も対立も反発も悪も正義も愛も憎悪も何も無かった
僕はただ 荒廃した世界の(はて)の一点を白々しい表情で見つめていた

虚言集

虚言集

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted