三題噺「50%」「その一瞬」「代償」
「確立は五分五分といったところでしょうか。今の医学ではそれ以上の事は……」
「……そうですか」
落胆する男に医者は声をかける。
「元々お体が弱いようですし、あなたの力で奥さんを支えてあげてください」
「はい……」
病院からの帰り道、男は妻が元気だった夏の日のことを思い出す。
その頃、男は新しい車を買った。新車のベンツだ。
20回ローンを組んで妻に正座させられたことを覚えている。
――もし、その時に別の形で罪滅ぼしをしていたら。
新車で崖の上のペンションへは行かなかっただろうに、と男は後悔する。
その一瞬が起こる前に、少しでも早く俺が反応できていれば、と男は過去の自分を責めた。
そんなことをしても時間は戻らないのに、男はそうせざるを得なかった。
肌寒い風が男の脇をすり抜けていく。
首をすぼめて歩く男の姿は、夕闇へと消えていった。
恐れていた日が来た。
これが過ちの代償か。
男はベッドの脇でうなだれることしかできなかった。
「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」
三題噺「50%」「その一瞬」「代償」