精神旅行

 手をつなぐ。ゆくえ。
 そのあとのことを、かんがえる夜は、いつもの虚しさよりも、もっと深い虚しさに、しんでしまいそうになる。でも、そういうときに、きみはいるのだから、ふしぎだ。かたわらで、カフェモカをのんでいる。テレビはなんだか、おもしろくないと思っていたのに、お料理番組だけは、ゆるせてしまう。つくらないと思うけれど、メモもとっていないし、でも、つくれたらいいなとあこがれるものは、ある。ローストビーフとか。
 ようやくここに、かえってこれた。

 ぼくは、いままで、どこに行っていたのかというと、べつに、どこにも行っていなかった、ので、たんじゅんに、きもちの問題。宇宙のこととか、世界平和のこととか、想っていられればよかったのに、そんな余裕もなかった。恋をしていたら、楽だったような気もするけれど、そんな、いきなり恋なんて、できるはずもなくって、けれども、きみが、
「きみは、きみでいいんだよ」
という瞬間、きみと、恋ができたらいいのにと思ったのは、ないしょにしている。
 ねこがなく、二十二時。
 世の中はもう、年末に向かっていて、みんなちょっと浮かれてる。そんな感じ。

精神旅行

精神旅行

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-16

CC BY-NC-ND
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