「もしさ、私が県外の会社で就職しちゃうってなったらどうする?」
「あー、どうだろうね。僕はこっちに残んなきゃいけないからな。」
彼はスマホから目を離さない。
「じゃあ別れちゃうのかな?」
「そういう選択肢もあるかもね。」
やっと目を見てくれた。
「なんでそんなこと聞いてくるの?もしかして、県外でやりたい事見つかった?」
「ううん、ただ聞いただけだよ。でもさ、普通嘘でも付いて行くって言うでしょ。」
拗ねたフリして目線を落とす。
「だって、そんな分かりきった嘘つきたく無いからね。もしかして、今の答え方不味かった?」
フリだとわかっててもちゃんと構ってくれる。
「ううん、今の答えも好きだよ。そう言ってくれて良かったとも思える。私ね、ちゃんと将来の事決めるよ。」
彼と目を合わせて言う事は出来なかった。

「ねえ、明日暇?」
分かり切ったことを聞いてくる。
「全然暇。なんかあんの?」
彼女がこう言う時は大体どこか行きたい場所がある時だ。さあて、明日はどこかなどこかな。
「それだったらさー、ディズニーランド行かない?」
全然無理。
「いや、飛行機でも新幹線でも無理じゃん。急に行ける距離じゃ無いって。」
「だよねー。今ちょうど行きたくなっちゃったのよ。じゃあ、いつか行こうねー。」
「いこういこう。それで、明日はどうする?」
「んー。私バイトあるからなー。」
「結局ディズニー行けなかったやん。」

「たぶんさ、えみちゃんが健の事狙ってたからだと思うわ。」
「えー!嘘!えみからそんな話聞いた事ないけどなー。」
「健が調子に乗った顔で言ってたから間違い無いと思うぞ。」
友人の恋愛事情をひょんなところから手に入れてしまった。恋愛に興味無い感じだったのに、、、えみったらやるじゃ無い。
「今度の飲み会楽しみだね!健君絶対連れてきてよ!」
「あんまり茶々入れ過ぎるなよ、馬に蹴られるぞ。」
「かかってこいってもんですよ!」

「最近どう?」
「まあまあかな」
「時間ある時どっかご飯行く?」
「そうだね、しばらく忙しいから都合のいい日あったら連絡するね。」

「改めて、就活お疲れ様!」
「ありがとうっ!」
久し振りに彼とゆっくりデートをした。自分の都合で最近会えてなかったし、かなり冷たい態度も取っていた気がする。ごめん。それでもこうやって祝ってくれる彼はやっぱり良い人だな。
「頑張ってたからな!正直寂しかったけど、本当に良かった!働き始めるまでいっぱい遊ぼうな!」
「うん!」
彼に寂しい思いをさせた分、これからはいっぱい遊ぼう。

「今日めっちゃ楽しかったね!」
初めてのディズニーは興奮しっぱなしだった!
「すげーいっぱい人いたな。」
「さっすがディズニーって感じだよね!」
「すごかったすごかった、一日中居て歩き疲れちゃったなー。」
「これ明日筋肉痛だねー。」
「もう俺らも若く無いからなー。」
「20過ぎた時にガクッと衰え感じたよね、、、」
心の中ではまだまだ若いとはわかっていながらも、少なからず感じる自分達の怠慢からの衰えに嘆く。
「今日はもうぐっすりだね。」
「違いないね。明日帰るのかー、もう一回行きたかったなー。」
「また来ような。」

「じゃあさ、結婚する?」
唐突のプロポーズに困惑する。
「しても良いけどさ、俺らまだ社会にも出てないじゃんか。軽々しく返事できないよ。」
「でも、遠距離恋愛が上手く行く自信は無いよ。こっちの帰ってくる予定も無いし、そっちも出る予定ないよね。」
「そうだけど、、、」
「それでこのままズルズル付き合って、適当な所で別れるの?」
「、、、」
そんなものずるい。こっちだってわかっているのになんで責められる側なんだ。一緒に解決策を探していくものじゃないのか。
「それで結婚って、、、結局結婚しても君は東京に行くんだろ?意味ないじゃないか。」
「そうだよ。でも結婚したんだったら、そこまでの覚悟がお互いにあるなら、、、」
「後悔しない?」
「それはわからないよ。」
それはそうだ。でも、しないと言って欲しかった。
「結婚しよう。」
「ごめん。今、覚悟がなくなってしまった。」
意味がわからなかった。せっかく覚悟を決めたのに。君から言い始めた事なのに。
「ごめんね。あなたには恋してた。でも、やっぱり恋から進めない気がしたの。」
全然意味がわからないまんまだ。
「大好きだよ。ありがとね、ばいばい。」
意味のわからないまま抱きついた。彼女は頭を撫でてくれた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-16

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