サングラスについて
サングラスについて
晩秋の朝、命乞いみたいな永遠がベランダに転がっていた。踏みつけたらぐちゃっとつぶれたから、ぼくはサンダルを洗わなくてはならなかった。サンダルの裏にひっついた永遠の脚と頭部はごちゃごちゃしていて、脚に見えたもののうち、何本かは指だったかもしれない。それに気づいたとたん、胃の中は不快感でいっぱいになった。
天動説は、セルフエスティームを確立するための最後の手段なのです。平等がきみを陥れて、これでもくらえってせせら笑うよ。もう誰も恨めなくなったきみは、最後に恒星を恨むけど、結局死後にはお星さまになってしまう。それを想像したぼくのからだはひくひくと震えて、口からはくつくつ息を吐いて、たのしくてたのしくてたまらないから笑い泣きしてたんだ。眠れない夜と、そういう夜が明けた早朝の震えに似ている。きみが恒星を恨むなら、ぼくも恒星を恨もう。恨んだり笑い泣きしたりしたあとにはきっと、命乞いしか残らない。天動説は笑わないし、泣かないし、恨まないし、ただ永遠に消滅し続けるだけだから。ぼくらだけがせせら笑われていて、一方的に不利なだけだから。
――明日、サングラスを買いにいきます。
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