コロナの秋に/新作俳句16首
杖にマスク 手に一輪の 菊の花
行き違う 白きマスクと 眼合い
何時に無く 澄むは 今年の秋の空
人込みに 仰ぐも狭し 秋の空
秋もなお 音なきミクロと 戦の世
暴君の 退かぬ世にも 秋の風
人々の 怒りの声に 散る木の葉
文明の 幹食い荒らす 見えぬ虫
常の秋 世に戸惑うは 人ばかり
詫びさびの 秋を詠うも 憚りて
はらはらと 地へと我が身の 木の葉かな
年を経て 身の置き所なき 浮世かな
ほこら陰 木の身の仏 ヒヨの声
青首の 白きその身や 柿の上
綿虫の 寂しや一人 宙を行く
幼子に 息を切らして 老いの影
コロナの秋に/新作俳句16首