水彩
手放したものさえ綺麗になっていく
わたしの知らないところで勝手に綺麗になっていく
強がりから零れたさよならは余りにも惨めで
まるで自分自身にも別れを告げているようだった
過去も未来も現実も焦れったく明滅するばかりで
すみなれた皮膚を剥ぎ切るにはいつも
どうしても涙が足りなかった
冷静さを欠いていたのは
想像力が足りなかったのは
あなたじゃなくて わたしの方だった
あなたと出会う前から一人でも生きられる力をもっていれば
錯乱せず 冷静に向き合うことが出来て
想像をはたらかすことが出来たのだろうか
浅はかなことばかり言っていたのだと
いまさら気がついたところでもう どうしようもない
背を向けたのはわたしの方なんだから
すこし気を抜けば そこらじゅうに名も無い花が咲いてしまう
わたしはあなたの記憶の中で 美しくならないことをただ願っていた
水彩