中学2年 立冬

晩秋の続き

男はどんな女とでも幸福に生けるものです。
かの女を愛さないかぎりは。

晩秋の続き

彼女は目が悪い、右目がほとんど見えていないから左目に頼っているという。しかしどう考えても左目が補えていないのである、あるときには信号を赤で渡ろうとして電車に乗るときは黄色い線がどこか分からなくなっている、私がいつも手をつないで一緒にいるが同棲しているわけでもないためすべての行動を共にすることができない、ならば眼鏡を買いに行こうと提案した。彼女の眼鏡姿は可愛かった
正直中学生だからとか女子だからと言った、不変属性的価値ではなく彼女の可愛いさは彼女だから可愛いのだと1人眼鏡屋で悶絶していたらどの眼鏡がいい?と聞いてきた。
これはよくあるパターンで変に返答を間違えると喧嘩になるやつだと窪美澄先生の本で学んだ気がする。色々な眼鏡をかけさせた、彼女の顔をずっと見ていたかった、多分眼鏡屋にあるフレームのほとんどを彼女にかけさせ選んだ気がする。どれが良かった?と私に聞く。全部可愛かったから全部買おうかとふざけて私がいうと彼女が真剣に考えてよと怒られた。これは?と一番地味な茶色の眼鏡を渡すと
彼女はそれが気に入ったのか一生大事にするねと言った。
私の出費だったがそれはどうでも良いのだ、彼女の前では私は下僕であり、また彼氏なのである。市の図書館に寄った、見やすいよこれと大はしゃぎしそうになったが彼女は
自分が今図書館にいることに気づき、声のトーンを落とした。図書館が閉館する時間になった、空は夕焼けとは言わずも赤茶色に染まっていた。彼女は私のコートのポケットに手を入れてきた、冷え性の私の手足はいつも冷たい。
それに比べ彼女の手は暖かく、すべすべしていて少し肉が付いている。彼女の手をもっと感じたく誤って力強く握ってしまった、少し力を入れただけなのに彼女が痛いとすぐに言った。瞬発的にコートから手が離れていく私の手跡が彼女の手に付いていた、力強く握るからもう手握らないと
言われた瞬間、絶望した。可愛い彼女の美しい手がもう握れないなら私は片腕を捨てても良いと思ってしまった。
悲壮感が伝わったのか彼女はすぐに私の手を握ってくれた
また痛くしたら泣いちゃうぞと言われたが正直泣いてる彼女を一度見ている私は泣いてる彼女は可愛いと脳内インストールされているため泣くところが見たかったが素直にごめんなさいと謝った。歩きながら見つけた喫茶店により、夜ご飯を済ませた後、彼女がせっかく目が見えるようになったから紅葉を見に行きたいと言い出した、私はすぐに海老名から箱根湯本までのロマンスカー切符を2人分取り明日、箱根の紅葉を見に行こう?と誘った。

中学2年 立冬

彼女との幸福は幸福を探すよりも見つける方が疾いのである。

中学2年 立冬

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted