メシア篇其の7

これちかうじょう

  1. デイアフタートゥモロー
  2. 埋め合って行けばいい
  3. インデペンデンスデイ
  4. 愛のカタチ
  5. モーニングデイ
  6. 星の数ほど

核心を突きます。

デイアフタートゥモロー

涙が零れるんだ。
だって、好きだから。
どんなに嫌っても、嫌いになろうとしても、
わざと振り向かせようとして、気を引こうとして、
そういったそぶりをしてしまった自分のせいで、
あの人の本当の心が見えてしまったから。
逢いたいけれど逢えないみたいな、
そういう問題じゃないんだけれど、
でも、好きなんだ。
大好きなんだ。

真咲へ

ごめん、変なこと書いた。
でも、事実だから、
お願いだから、
思い出してよ。

猪瀬大地

埋め合って行けばいい

恋をしている。
そういう自覚があるから、この言葉に重みを感じる。
僕が忘れていて、大地が覚えていること。
そもそも、中等部時代といっても、
僕はそんなに大地と接してはいないのだ。
生徒会で、副会長として、
次期副会長の大地に仕事を教えただけなんだけれど、
そのほかに何か、僕は忘れているんだろうか。
これ以上言わせるのも、酷だろうなと思うから聞けない。

思い出す。
思い出すんだ。
初めて逢った時はどうだった?
あ、ちっちゃいなって思ったはずだ。
そう、今でも身長が低い大地のことだから、
中等部時代はもっと低かったはず。
かくいう僕はすでに170は卒業の時にあったわけだし、
今では180センチ。
今の大地が158センチくらいだとすると、
うーん、22センチ差か。
だからよくおんぶをねだるんだろうか?
あ、違う、話が逸れた。

思い出す。
そうだ、中等部時代、古関先生がよく高等部の生徒会顧問として、
出入りしていたような。
実を言うと、今の高等部の生徒会は、僕と藤堂がやっと作ったようなもので、
実際、僕たちが入学したときには生徒会は存在しなかった。
だからその礎を作ろうと、古関先生が奮闘していたとか、
そんな感じだったと思う。

だとすると、中等部時代の大地とも面識があるはず。
大地と古関先生が一緒にいるところは、
…見たことないな。
覚えている限りは。

でも、本人には聞けないし…。
でも思い出せないし…。

教えてとか言ったら、答えを教えてと言ったら、
間違いなく大地は頭突きなり蹴り飛ばしなりしてくるはずだ。

でももう、他に術がない。

初めて、の人?

ちなみに、僕の初めての人は、大地になるんだけど、
大地は古関先生と初めて、した。
そこに疑問点を感じる。
それは、どこで?
どういった経緯で?
同意の上で?

まさか、そんな。

インデペンデンスデイ

「あ」
真咲からの電話だ。
着信音をあの有名な洋画の最期の曲にしたから、
すぐにわかるんだ。
そう、
独立記念日。

「もしもーし」
『…こ、こんばんは』
「なにどもってんだよ」
『いや、その、どうしても分からない問題が出てきてしまって、それを君にも解いてもらおうと思って、
 それで電話したんだけれど、邪魔だったかな』
「べーつに」
嬉しいな、嬉しいな。
真咲からの電話だ。
俺、この人のこと好きなんだよ。

「でも真咲が分からない問題が俺に解ける?んな天変地異みたいな話」
『それは暴行だった?それとも君にも過失があるのかな』
「…おい」
『僕は大地とこれからもずっと一緒にいたいって思ってる。だから病気のことも理解したいし、
 薬のことも一緒に考えていきたい。
 でも、今のままじゃ駄目なんだ。全部解決しないと、きっと前に進めない。
 前に進むために、よりよい未来に向かうために、
 僕は何だってするよ。それが大地を傷つけることになっても、その傷だって僕が治すから』
嬉しいな、嬉しいな。
真咲がそこまで言ってくれるなんてな。
俺、やっぱりこの人のこと、大好き。

「ねえ、今から逢える?」

愛のカタチ

逢いたいと囁かれると、居てもたってもいられなくなるのは男の性分だろうか。
愛が、芽生えるときは、
きっと、こういう夜の匂いがするんだろう。

『今どこ』
ラインが入った。
「まだ電車内です、と」
でもすぐに返事が来る。
『今どこパート2』
「…あと15分で最寄り駅に着きます」

それからパート56まで今どこ攻撃が来た。
こういう時、家が離れていると結構、話が困難だ。

「大地」
近くの公園で待ち合わせをした。
ブランコに座っていた大地が顔を上げる。
「おーそーいー」
「ごめん、鈍行しかないから」
「待ちくたびれた、おんぶして」
「…あのね、普通高校生がおんぶなんて」
「おんぶ!」
「…うん、はい、どうぞ」
大地をおんぶする僕。うーん、なんていうか、下僕的な。

「ねえ真咲」
「うん?」
「このままホテル行こう」
「いや、あのね」
「じゃあいい、銭湯で」
「はい?」
「もしくはどっかの回転寿司でいいよ」
「…どれが本命?」
「知ってるくせに」
知らないんだ、こういう夜には、何がふさわしいのかさえ、
恋が、まだ愛にならないうちは、
どんな方程式も見いだせない。
恋が、愛に変わっていくときに、
いろんなものが、美しくも、そして逆に、醜くも見えるんだろう。

「俺たち、まだしてないもんね何も」
「何も?」
「キスも、エッチもしてない」
「ううん、してるよ」
「?」
「僕が、君に恋をしてる」
恋なんてそうそうしないから、城善寺とのこととは全然違うから、
だから、僕は戸惑うんだ。
そのたびに君は笑って、僕をせっつくんだ。

「大地は?」
「何が」
「僕に何かしてないの」
「…してませーん」

恋が他人相手にするものならば、
愛はまるで自分を相手にするようなもの。
家族のような、
親密なものを相手にするような、
そういうものが、愛。
だとしたら、
どんな形をしてるんだろうか。
見えたらいいのに、
見せてくれたら、いいのに。

「ねえ真咲、今どこ」
「すぐそばにいるよ」

モーニングデイ

「俺ね、冬馬が初めての人だって言ったじゃん?」
「…うん」
「あれ、本当なんだよ。嘘じゃない。その証拠が薬だって話」
「じゃあ」
「最初は元気が出る薬だって言われた。落ち込んでたから、俺。
 真咲に仕事教わってて、でも理解できなくて、自分のものにできなくて、
 だからそれを冬馬に相談したんだ」



「天野先輩みたいにうまくできない…」



そうぼやく俺に、そこを通りかかった冬馬が目を付けた。
「君、中等部の生徒会の子?」
「…副会長です、次の」
「そっかそっか、じゃあ天野君のポストに君が」
「でもうまくできなくて…こんなんじゃ文化祭できなくなっちゃう」
「どこが分からないんだい」
「司会進行をしなきゃならないんですけど、こことここの継ぎ目がうまくいかないんです」
「元気ないからじゃない?あ、そうだ、天野君に負けないように!とか思っちゃってる?
 大丈夫だよ、彼の真似はそうそうできっこない。
 それよりさ、これ、飲んでみる?」
冬馬は若い先生だ。
古関冬馬、という名前もなんだか変わっているし。
「何ですかこれ」
「元気になるおまじない」
「でもこんなドリンク飲んでも俺は」
「まあまあ、試しに飲んでみたらどう?僕も飲んじゃおうっと」
「…」
中学生だぞ、栄養ドリンクは駄目だろ、
と思いつつ、冬馬が飲み干すのを見て、俺もふたを開けた。

そこから、あんまり記憶がない。

気が付けば俺は床の上で冬馬に抱かれていた。
散乱した書類が、床の冷たさを伝えている。
でも、そんなの気にならないほど、体が火照っている。
さっきのドリンクのせいだ、とは思わなかった。
初めてするセックスのせいだと、そう思い込んでいた。

ふとそっちを見た。
廊下との隔たり、ドア。
そこに見た。
誰かが、こっちを見ている。
覗かれてる、と思うと余計に体が火照った。
体の芯から気持ちがよくて、俺はそれとは裏腹に逃げようともがいた。
駄目だ、俺はまだ子供だからこんなの分からないから。

さっきまで教えてくれていた天野先輩だろうか。
もう1度そっちを見ると、もう誰もいなくなっていた。
もうろうとする中で、
俺はたださっきの覗きが、天野先輩だと強く信じてしまった。
助けてくれてたらよかったのに。
助けて欲しかったのに。
そう、思うたびに、体があの薬を欲した。
そのたびに、俺は冬馬に抱かれた。

星の数ほど

「僕は電車の時間があるから引き返したりはしないよ。忘れ物をしたとしても、
 電車に乗れないと駄目だって、だから気が付いても戻ったりしない」
「でも生徒会室に用がある人なんて他に」
「でもそんなことより」
「?」
僕はよいせ、とおんぶしなおした。
「話してくれてありがとう。僕は信用に値する人間なのかなあ」
「何それ」
「交換日記をしてても、こうして直に逢っていても、いつも君を感じるんだ。
 傍にいてくれるような気がしてた。
 最初は変な子だって思ったけど、それも恋が変えてくれた。
 恋が教えてくれた。
 星の数ほど、人はたくさんいるけれど、僕にとっての星は、北極星は君だよ」
「死ぬほど恥ずかしい台詞だな」
「言わせてるのは大地だよ」
「…あーもういい、下ろせ」
「…はいはい」
そう、
星の数ほど、人はいる。
出逢う人も、たくさん。
別れる人もたくさん。

そんな中で、
僕たちは出逢って、恋をした。
いつかは、愛に変わるだろうか。

「大地、今日は僕からするよ」
「は?」
「そーれ」
「お、おい!」
両脇に手を入れて、思いきり高い高いをする。
「今後の話になるけれど、」
そのまま抱きかかえて唇を重ねる。
「経験させてほしいな、君と」
「は、はー?」
「君は自分が汚いとか思ってるんだろうけどそれは違うよ。
 君はどんな人間より、きっと美しい」
「ばーか」

メシア篇其の7

超恥ずかし。

メシア篇其の7

核心を突きます。

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