はろうぃん・ないと
今年も夜の街にハロウィンがやってきた。
ほら、綺麗な薄黄色の満月が歓迎しているよ。
オレンジと黒、紫に黄色の装飾があちこちに施され、月光に照らされている。
なんだか不気味でゾクゾクしないか?
わっ!! お化けの行列がこっちに向かってる!!
なぁんちゃって。仮装した子供達だよ!
皆、なかなか様になってるねぇ。おお、怖い怖い!
きっとお菓子を貰いにやってきたんだね。早速突入するみたい!
ちょっと古そうな木製の家で、如何にも魔女が出そうな雰囲気だ。
トントンと扉を叩いて、ちゃんと挨拶を忘れないようにね?
お、来た来た!
せーーの!!
「Trick or treat !!!」
うん、よく出来ました! 出てきたのは優しそうな魔法使いさんだ!
手にはお菓子がいっぱい入った黒鍋があるよ! 沢山貰えて、よかったね。
それじゃあ、じゃんじゃんお菓子を貰いに行こう!
魔法の言葉、覚えてるよね? そう、「trick or treat」 だよ!
あちこち回っては、魔法の言葉を唱えていく。
するとどうだろう! こんなにお菓子が貰えた!
子供達の籠は飴やチョコ、キャラメルにグミで溢れ返ってるよ! 皆も大喜び!
って、ああ! もう食べてる子がいる! 先に食べちゃったら晩ご飯が食べられないでしょ!
お母さんだってカンカンに怒るよ!
あ、こら、待ちなさい!
はぁ、逃げられちゃった。もうどうなっても知らないもんね!
お、他の子達はお菓子を交換してる!
これ苦手なの? 美味しいのになぁ。今度騙されたと思って食べてみなよ、本当にびっくりするくらい美味しいからさ!
え、こっちはアレルギー? それは大変! 交換して大正解だよ。新しく手に入ったお菓子、後で楽しく食べようね!
いつの間にか、ここ一帯がお菓子の香りで溢れ返ってる! こんなに貰った覚えはないよ?どこからこんなに出て来たんだろう?
まあ、いっか!
ああ、本当に甘い香り! お酒なんか飲んでないのに、何だか酔って踊り出しちゃいそうだ!
よし、皆! ここで即興のハロウィンパーティーを開催しちゃうよ!
今夜は思いっきり遊んじゃおう!
悪戯だって大歓迎!
だって今日は、一年に一度それが許される日、ハロウィンだからね!
さあさあ、踊って、叫んで、驚いて!
お化けやモンスターに変身できて、悪戯できちゃうこの夜を盛大に祝おう!
幽霊は「Boo!」と飛び跳ねて!
狼男は月光の下で“Arooo!”と吠えて!
魔女は“Abracadabra!”と呪文を唱えて!
みんなみんな、この陽気な恐怖を楽しんじゃえ!!
祭りの後はいつも同じ。元気よく遊んだらもうくたくた。それなのに、ウキウキが残っている。はしゃぎ足りない子供達は、ふらつきながらも笑顔で遊びを続けようとする。
おっとしかし、残念ながらもうこんな時間。そろそろこの楽しい夜をお開きにしよう。遅くまで外にいると、暗闇に潜んでる本物の幽霊たちが君達を連れ去ってしまうかもしれないからね。
ここで一度、人数を数えてみよう! 全員ちゃんといるかな?
って、あれ? 一人足りないぞ? さっき数えてみたら21人いたのに。
え? 最初から20人だから大丈夫だって? 可笑しいなぁ。確かに21人数えたのに。
ま、まさか、本物のお化けが紛れ込んでいたの!?
ああ、ちょっと待って! 子供だけで夜中を走ると危ないよ!!
……やれやれ。子供達は怖くなっちゃって、泣きながら自分たちのおうちへと走って帰って行ったよ。
皆、ちゃんと無事に帰れるかなぁ。そうだ! お守りの呪いをかけてあげよう!
指をちょちょいと振れば、はい、できた!
蝶々さんがかける魔法の鱗粉が、子供達をきっと守ってくれるでしょう!
それにしても、悪戯好きなお化けさんには困ったなぁ、もう。
って、あ! 月の前でふわふわ浮いてるの、お化けさんじゃん!
しかもその帽子、さっきお菓子を食べてた子供のだね? なるほど、あんなに悪戯っ子だったことも納得だ。
もう、あとで子供達にきちんと謝ってね? 君のせいで皆怖い思いしたんだから!
ああ、笑ってたら消えちゃったよ。
本当、やれやれだ。
さてさて、今度こそ本当の終幕だ。
愉快な夜はここでおしまい。もうすぐ夜明けが来る。
僕たちのような、夜にしか出られないoutcastは、ここで退散するとしましょう。
それでは皆さん、おやすみなさい。
あ、言い忘れるところだった。
ふふ、皆さん?
「Happy Halloween !!!」
はろうぃん・ないと