デッドクライシス

デッドクライシス

様々な想いを持つ複数の主人公たちによる
生きるか死ぬかのゾンビサバイバル

Xゲーム好きの引きこもりX
嘘だろ。これが……現実な訳……

X謎に包まれた天才女子高生X
この世界の不条理さに私は立ち向かわなければならない


X妹想いの不良少年X
救い出さないと。そう、絶対に。何があっても。妹を

X強運で強気な少女X
私は生き抜くためなら全てを利用する

X性格が神な女子高校生X
誰かが……これ以上、誰かが死ぬのを見たくなんかない、だから

X現在逃亡中の凶悪犯X
俺はこの世界に否定された。だからこそ世界を壊し続けてやるんだよ

X曲がった価値観の運転手X
ちっ、邪魔だよなあ、人間も化け物も俺の障害になる奴はよお


X過去を抱えたテロリストX
死んだら何もかも終わりだろうが。死にたくないなら、銃を構えろ

Xあるシスコンの病弱な妹X
決まった運命からは逃れられないんだよ。私みたいに

プロローグ~引きこもりの日常~

人口が集中する中心地から少し離れたごく普通の住宅街。

高級住宅街とまではいかないが、

一軒家が数多く並んでいる。

そんな風景は不思議と人を惹きつけていくのだろうか。

多くの人たちが町の外から移住してきている。

さらに、この町は今話題の都市開発の真最中であり、

次第に、その面積を押し広げていくのであった。

そんな家々やら道路やら何やらが町中の景色として映し出される窓をカーテンで塞ぎながら、

彼、雨宮京(アマミヤキョウ)は一言呟いた。

「太陽……眩しすぎだろ」

窓から差す光を全て遮断し終えると、部屋は薄暗くなる。

彼はあたかも暗闇が見えるかのように椅子に移動し深く腰掛けると、

PC画面を起動する。

少しして、部屋はたちまち一つの画面の明かりによって照らされた。

彼は新たな光を頼りにヘッドホンを耳にかけながら、

素早い手つきでキーボードを打ち込んいく。

そして、彼は再び呟いた。

「よし、ゲームスタート」

彼の名前は雨宮 京(アマミヤキョウ)

本来なら平日の真昼間、平凡な高校生として学校に通う筈だ。

だけど、彼はそんな平凡とは程遠い世間の住人、

いわゆる引きこもりであった。

部屋から出るのはトイレ、ご飯、お風呂のみ。

家から外に出るのは恐らく一ヶ月に一回あるかないかだろう。

彼が引きこもりになった原因はただ一つ。

自分自身の日常に魅力を感じなくなったからだ。

高校に上がるまでは何気なく普通の生活をしていたし、学校もちゃんと行っていた。

だがある日ふと『何の為に自分が生きているんだろう』と思った。

最初は単純な疑問からだったのだが、

考えれば考えるほど疑問のスパイラルが増えていく。

いったいこの繰り返される日常はいつになったら終わるんだろうか。

いや、そもそも終わりなんてあるのだろうか。

いつもと同じ景色、変わらない憂鬱感どれほどの時が経てばなくなるのか。

自分自身の今を脱脚出来るのだろうか。

そして、京は閉じこもることにより、考える事を諦めた。

日常を否定して、逃げつづけることを選んだのだ。

恐らく大半の引きこもりには明確な意思や理由は存在しないだろうが、

京ははっきりと自身が引きこもる理由を明確にして、

彼なりの青春を楽しもうとしている。

小さな小さな部屋の中で。

そんな彼の世界との唯一の繋がりは、

人類が生み出した大いなる発明、インターネットだ。

現在では世界中がインターネットの恩恵を受けており、

景もまたその一人であった。

インターネットのほとんど使い道がオンラインゲームにより費やされる。

特に、ゲームのプレイヤーがランキング化されるゲームをやり込み、

世界ランカー1位の座を狙うというものだ。

名前が頂点に載るとすぐに別のゲームでまたトップを勝ち取りにいく。

そして、それをひたすら繰り返す。

元々あった天性のゲームセンスもあり、

ネット界ではかなり有名になっていった。

そんな京だが簡単にトップをとるような訳も無く、

相当な努力をしたのもまた事実だった。

「よし、7キリ」

PCの画面には迫り来るゾンビたちが映し出されており、

素早いカーソル捌きにより次々と倒れていく。

どれも頭を狙った隙のない攻撃でありゾンビが弾一発で死んでいく。

数分で全て倒し終わり、即座にタイムを確認する。

「あ~、ダメだ。あと20秒早かったら」

どうやら期待通りにはあまりいかないようで安堵のため息を漏らす。

ここ最近、景がやっているのは

「DEAD HATHERD」と呼ばれる話題沸騰のゾンビシューティングゲーム。

より高いスコアを出したらいいのだが、

どう足掻いても世界ランク2位止り。

もうかれこれ一ヶ月以上やり続けていてもこの有様だ。

他のゲームと比べても難易度にはほぼ差はない。

ゲーマーの誇りとして負けられないし、

認めたくはなかったのだが、

やはり現一位の『もやし小僧』のスコアには勝てなかった。

「絶対、チートだろ。これ」

画面にはランキングが表示されており京の得点もかなり高いはずなのだが、

歯をぎしりと噛み締めながら一つ上のスコアを見つめる。

どうやっても届かない。

何でだ?

それに、ハンドルネームが『もやし小僧』とかふざけ過ぎだろ。

こんな奴に負ける程、悔しい事は無いよな……

ため息を漏らしながら、天井を仰ぎ見る。

次であいつのスコアに届かなかったらもうこのゲームは諦めよう。

半ば諦めの表情を浮かべながら、

ラストバトルに向けて精神統一を始める。

これで最後、もう次は無い。

絶対に負けられない。

景はまるで負けたら引退の最後の大会を行う前と似通った心境になっていた。

目を閉じながら、イメージを浮かばせる。

何が、どこで、どのタイミングで出てくるのか、どう対処するのか。

全ての感覚を研ぎ澄ましながら、

集中力を極限まで高める。

きっと他人から見たら相当の馬鹿に思われるだろう。

だが、京の表情は真剣そのもので、

何かを必死で行う顔つきになっていた。

「じゃあ、始めるか」

再び椅子に深く腰掛けると、スタートボタンをクリックした。

一瞬の沈黙の後、部屋内はキーボードの音に包まれる。

まずは、この位置からーー

よし、次は右からーー

ここで、方向転換ーー

その次は下。左。下。上ーー

爆弾はこのタイミングで投げてーー

あと3秒でボーナスが出現ーー

いけるぞーー

残りは、9体ーー

目標タイムまであとーー

頼むーー

部屋内にはキーボードの音が止み、静寂に包まれる。

ランキングを見ながら、

景は妙な清々しさを感じていた。

結果は惜しくもあと一歩。

これだけの全力を出してもやはり勝てなかった。

だが、悔しさは全く無く、

自分自身が全力を出しきったことに満足しきっていた。

まるで引退試合を終えたあとのように。

そんな妙な雰囲気を感じとりながら、

ハンドルネーム『もやし小僧』に微かな憧れを抱いた。

「流石に強すぎるって。完敗だよ」

京は手を休めるついでに、

パソコンのメールボックスを確認した。

すると、新着のメールが一件あり、

送信者の名前欄を見て驚愕した。

「……もやし小僧?」

つい先ほどの白熱した空気が冷めないまま、

内容を確認する。

ーー本文内容ーー

こんにちは、俺は『もやし小僧』です。

『クライシス』さん俺とチャットしてくれませんか?

ここのリンクを開いた所にきてください。

ーーーーーーーー

送られてきた内容は昨日のモノであった。

いつもPCのメールを確認しないので、

今回のように見落とす事は時折起こるのだ。

京はすぐさまリンクをクリックしチャットを開く。

チャットにはまだ誰も居らず、

来るまで待つことにした。

まさか、もやし小僧にネット上で会えるとは。

今でも、信じられない。

他人のゲーマーからメールが来る事なんて聞いたことないし。

「あっ、きた」

【初めまして、もやし小僧さん】

【……ああ、来てくれたんだ】

【どうして僕なんかにチャットの誘いを?】

【実は聞きたい事が……あってさあ】

聞きたいこと?

一応、尊敬の念が浮かんだ人物だが、

ほぼ他人に等しい自分に聞きたいことなんてあるのか……

【いいですけど、どうしたんですか?】

【……俺は死んだ方がいいんじゃないかと思って】

質問の内容を理解するのに、

少なくとも数分はかかった。

その上、理解してその答えを探すのにさらに数分かかった。

その間、両者は無言。

沈黙を破ったのはもやし小僧だった。

【……突然、悪かったな】

【実は大切な人が目の前で死んでしまったから】

【いっそのこと自分も死んだ方がいいとか考えてしまって】

気づけば額からは汗が流れており、

先ほどまでの空気からは一変し暗い感じが辺りを漂う。

相手に何を言えばいいのか全く見当がつかない。

【確かに、親しい人間が死ぬのは辛いし、苦しいかもしれない】

【だけど、それであなたが死ぬのは間違いだよ】

無意識の内の回避行動だろうか。

いかにも主人公が言いそうな綺麗事をキーボードでカタカタ並べ始めた。

さらに、続けてーー

【死んでしまった親しい人もきっとあなたには死んで欲しくないと思っている筈だよ】

【それに、少なくとも僕は君に死んで欲しくないから】

【……どうしてだ?】

【ライバルが居なくなったら淋しいだろ】

【次はランキングで一位獲るから覚悟しとけよ】

【……そうか】

【ああ、だから死ぬなんてもう】

【……なあ、あと1時間後に春桜公園に来てくれないか?】

…………春桜公園

え、春桜公園だと。

「……嘘だろ? 何でだよ」

京の脳裏には部屋内には留まりきれないほどの疑問が浮かぶ。

春桜公園は家から徒歩10分弱の所にある大きな公園であり、

町中に名は知れ渡っているものの、

知名度は世界規模まして日本規模など全くと言っていいほど皆無である。

会っていきなりオフ会ってどういうことだよ。

それ以前に、偶然か?

何故待ち合わせがこんなに近いのだろうか?

いきなりのメールといい、まさか……知り合いか?

でも、知り合いの中に俺以上にゲームができるやつはいないはずだ。

まして、有名なゲームの世界ランカーがリアルの友達なら当の昔に気づくに違いないよな……

【いいですが、もしかして知り合いですか?】

【……会ってから話すよ】

【……分かりましたよ。あと、さっきの死ぬとかどうとかは大丈夫ですよね?】

【ああ、そのことならもういいよ。とりあえず、会いに来いよ】

【じゃないと、本当に死ぬから】

【待て待て待て、だから、冗談で死ぬとか気安く言わないで下さい】

【ふっ、じゃあ噴水の所で待ってるからな】

【わかりましたよ】

京は手元にあった炭酸ドリンクを手にとりながら、

酒に酔いつぶれているかのように一気に飲みほす。

……はあ、今日はどんな厄介日だよ。

それにしても、怪しすぎる。

自殺願望がある世界ランカー1位は実はご近所さんで、

あなたのことは全て知ってますってか。

怖すぎるだろ。

いいのか……行っても……

炭酸が若干抜けたドリンクが空になるのを確認すると、

部屋の隅にあるゴミ箱に向け投げる。

ペットボトルはゴミ箱に吸い込まれるように引き寄せられ見事ホールイン。

体勢を明かりに向き直し再度チャット履歴を確認する。

『じゃないと、本当に死ぬから』

京はある一行を見ながら、

妙な脱力感に襲われ呟いた。

「……はいはい行けばいいんだろ。行けば」

耳からは最近はまっている音楽をリピート状態にして流していたが、

PCの電源を落とすと同時に流れなくなり、

ヘッドホンを外す。

そして、外界の音を耳に取り入れるとある異変に気づく。

外がやけに騒がしい。

はっきりとした音では無いのだが、

あまりいい感じのしない音だ。

耳を澄ますが様々な音が混ざりに混ざりあい音一つ一つが何なのか聞き取れない。

「何か嫌な胸騒ぎがする」

その予感が的中したのか次の瞬間、

混沌の一部がはっきりと聞こえた。

「ぎゃあああっああああああああ」

それは、あまりにも叫び声であり、叫び声だった。

続いて聞こえてきた爆発音。

さらに、別の叫び声が続く。

「……何が起こってるんだ?」

京は回転椅子から跳ね上がるように飛ぶと、

閉ざされたカーテンを即座に開く。

「……何だよ、これ」

視界に入った広大な町の景色は一変し、地獄絵図と化していた。

所々燃えている家々。道路に広がる大破した車。

止まらない叫び声。『何か』から逃げ惑う人々。

耳に響く銃声。人々を追う『何か』。

終わらない叫び声。殺しあう人々と『何か』。

血だらけの死体達。

窓にはそれらがまばらに散りばめられており、

理解不能のカオスを表現している。

自分の目に写る光景が嘘であって欲しい。

何かのドッキリでサプライズなのだと思い込みたかった。

だが、自分にそんな事がある筈もなく。

どうしても額縁の先の現実をやはり飲み込むしかなかった。

そして、京の視線は景色の一部、逃げ惑う女の人を捉えた。

社員服を身に纏った女性を追いかける沢山の『何か』は血だらけで、

はたからみれば重傷を負った人間の様にも思われた。

服装はそれぞれ実に様々だが、やはり色はワンパターンに統一されていた。

ーー赤色ーー

恐らく誰が見ても真っ先に救急車を呼ぶレベルの怪我だろう。

動いているのが不思議なくらいに。

会社勤めのOLは徐々に追い込まれていき、

やがて退路を絶れたのか動きを止めた。

距離を狭めていく『何か』は顔が血だらけで表情は分からなかったが、

助けを懇願する女性の表情が全てを物語っていた。

まるで顔に恐怖と書かれた文字が

大きく貼り付けられているかのように。

やばいぞ、このままじゃ……

どうする? 今から助けに行けば……

京は焦燥に駆られながら打開策を巡らせる。

しかし、時既に遅し。

一体の『何か』が口を大きく開けながら、

OLに覆い被さった。

「きゃあああ、いや、いや、やめて……や、いやあああああ」

彼女の声もまた混沌の一部と化していった。

OLの肩は『何か』により深く噛まれ、

傷口からはドクドクと赤い液体が溢れている。

人道の道に反した人型の口は、

彼女の血により赤く染まっていた。

そして、とうとう逃げることを諦めたのか、

女の人は膝をガクリと落としながら倒れ込んだ。

そこに、さらに一体、もう一体と

次々なだれ込むように集まっていき。

気づけば、女の姿は血だらけの『何か達』によって埋れ姿が見えなくなっていた。

その一部始終を窓を挟み目撃した京は、

あまりの出来事に言葉が出なくなった。

……人が……死んだ……のか?

先ほどの光景を思い出そうとすると、

何か気持ち悪いモノがむせかえってきそうになる。


「……これじゃあ……ゲームと」

京は最後まで言い終わることなく、

オンラインゲームの敵であるゾンビを思い出した。

京は先ほど見た『何か』とゾンビの共通点を探す。

血だらけで死体に似て、人を襲い人を食べる。

まさに妄想と現実が一致した瞬間だった。

「じゃあ、あれはゾンビなのか……」

窓を見つめる京の口もとが歪む。

現在、この町は崩壊し、

人じゃなくゾンビが徘徊している。

もっとも世界の終わりに等しい出来事と言っても過言ではない。

一度外に出たら生きていられる保証は全くない。

自分が逆に人を襲う立場になるかもしれない。


そんな絶望的で危険な状況に置かれたら、


人間はいったい何を想うのだろうか?

恐怖する者。

混乱する者。

絶望する者。

神にすがる者。

驚き投げ出す者。

死にたくないと叫ぶ者。

自殺しようとする者。

恐らく人間一人一人それぞれに、

様々な想いが存在しているのだろう。

そして、雨宮 京もまた何かを想う一人であったのだ。

『ある日、ふと疑問が浮かんだ』

ーー繰り返される日常ーー

ーーいつになったら終わるのか?ーー

ーーいつもと同じ景色ーー

ーー変わらない憂鬱感ーー

ーーどれほどの時が経てばなくなるのか?ーー

ーー自分自身の今をーー

ーー脱脚出来るんだろうか?ーー

窓に映る景色を眺める京の身体中は、

どことなく震えており、姿だけ見れば、

必死になって怯えているようにも思われた。

だが、窓に目をやると、

震えの本当の意味を知ることになるだろう。

何故なら

窓に映る少年の表情は



微かに

笑っていた。


まるで全身の震えが

武者震いだと思わせるかのように。



この日、世界は終わり。

同時に始まったのだった。

デッドクライシス

まだ未完成ですが、今後もどんどん更新していきたいと思います。

他の小説投稿サイトでも、

デッドクライシス本編や視点ごとのストーリーがあるので、

気に入った方は見てみてください。

(主な他小説サイト)

E☆エブリスタ
↓リンク

<a href="http://estar.jp/.pc/_novel_view?w=21993398&_ck_=1">E☆エブリスタ デッドクライシス</a>

デッドクライシス

様々な想いを持つ複数の主人公たちによる 生きるか死ぬかのゾンビサバイバル (ゲーム好きの引きこもり・謎に包まれた天才女子高生・妹想いの不良少年・強運で強気な少女・性格が神な女子高校生・現在逃亡中の凶悪犯・曲がった価値観の運転手・過去を抱えたテロリスト・あるシスコンの病弱な妹)

  • 小説
  • 短編
  • 冒険
  • アクション
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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