風に揺れる
(すすき)が撫でているのは
夕焼けだ

二度と帰らぬ日々を想って
赤い傷口を撫でているのだ

空にだんだん滲んでいって
(つい)には見えなくなってしまう

あの石ころはどこに転がっているのか
鼠黐(ねずみもち)はもう枯れてしまったのか
あの歌は誰が歌っていたのか
この嘆息は幾度目だろう

沈めば冷たい虫の()を聞く
十三日の月は欠けている
芒は風を撫でている
風は声を運んでいる

頬を撫でて、微かな声を

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-08

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