月に独白

「自分だけって考えに僕はどうしてもなれなくてさ。
君には少しの不安も孤独も感じて欲しくなかった。
ほら、僕らあの月をたよりにきっと帰れるはずだから。
帰る場所がなくなっていたら、そのときは新しい居場所をさがしにいこう。
僕がついているから。決して君をひとりになんてさせないから。
君が僕を疎ましがって、いつか僕の元から離れていっても、
僕は君の味方でいるから。
死ぬまでそうだから。死んでからもずっと、それは変わらないから。
ずっと、変わらないから。

・・・君もきっと、僕が閉じ込められているとき、葛藤があったんだろう?
僕は君だけ助かればいいとばかり思っていたんだ。
でもそれは、君の正義に適っていなかったんだな。
そしてある意味では、僕らふたりは似た者どうしだった。
あのときの君の優しさは、決して弱さから生まれたものではなかった。
グレーテル。僕らはきっとお互いにとっての、唯一の神様になりたかったんだな。」

月に独白

月に独白

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-07

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