こんなに速く走っていたら

きみよりも先に、火が消えてしまうかもな。

外はこんなにも、

激しい風が吹き荒れているというのに。

向こう見ずなところとか、

ほんとうにきみに似てきたなと思うよ。

こうなるなんて、きみも僕も想像してなかっただろうな。

でももうすぐ、きみに追いつきそうだよ。

どじな僕のことだから、声をかけずに追い越してしまうかもな。

でもきみはそんなこと、きっと気にしないだろうな。

次はきみが、僕の背中を見る番だよ。

僕にはきみを止められない。

きみにも僕を止められない。

止まったらいけないことを教えてくれたのは、

他でもないきみだったから。

ああ、この地面を蹴る感触も、感動も、感傷も、

すべてが言いようのないほど美しい。

この肉体が朽ち果てようとも、煙霞痼疾の心は、この世界の何処かで、煌々と燃え盛っている。

燦然と、光り輝いている。

もう、誰にも僕たちを止めることは出来ない。

きみがきみを止められないように

僕も僕を止めることはもう出来ない。

もう、走り抜くしかない。最後まで。

火が、風に煽られて、次第に小さくなって、そして

やがて消し飛んで、二度と再生出来なくなるまで。

それでも僕は、きみを追いかけてここまで来たこと、微塵も後悔していないよ。

微塵も、恨んでなんかいないよ。

きみのおかげで、あんなに綺麗な景色を見ることが出来た。

こんなに心地良い風を、感じることが出来た。

だから、そうだ…ありがとう。わすれないよ。

わすれない。

たすけてくれて、ありがとう。

ほんとうに、ありがとう。

すこし先の方で、待ってるよ。

それじゃ、元気でなーー。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-04

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